リバプールにとって厄介だった男
前半の終盤から後半の立ち上がりにかけて、バルセロナはボールを保持することができなかった。リバプールの鋭いプレッシャーに手を焼き、細かいパスを繋ぐのが困難だと見極めた同チームは、たまらず長いボールを蹴ることしかできなかったのだ。
セカンドボールの回収もリバプールが上回った。そこから素早い攻撃へと展開させ、何度かシュートまで持ち込んだアウェイチーム。それでもテア・シュテーゲンの好セーブなどもあり、ゴールを奪うことができない。
もう一つリバプールにとって厄介だったのはビダルの存在。豊富な運動量とボールの奪取の上手さを兼ね備えるチリ代表MFの働きは、バルセロナを大きく救ったと言えるだろう。
果敢にオーバーラップを仕掛けてくるアンドリュー・ロバートソンを警戒しながら、危険だと感じ取れば最終ラインまで戻って守備に加担する。的確で鋭いタックルはリバプールの攻撃を何度もストップさせた。まさに「ファイター」と言うべき献身的なプレーであった。
データサイト『Who Scored』によれば、この日のビダルはタックル成功数5回を記録しているという。これは両チーム合わせてトップの数字だ。また、インターセプトの回数も2回であり、これはチーム3番目タイの成績となっている。守備面での貢献度は申し分なかったと言えるだろう。
ある程度ボールポゼッションを放棄することを想定していたのだろう。だからこそエルネスト・バルベルデ監督はパスセンスに長けるアルトゥールではなく、守備で違いを生めるビダルを起用したのではないだろうか。いずれにせよこのチリ代表MFを先発させた指揮官の判断は大正解だった。
そしてリバプールは押し込む展開が続くが、集中した守りを見せるバルセロナの守備陣をうまく攻略することができない。シュート数こそ多いが、完璧に崩せていた印象はなかった。
だが、この時点でまだ1点差。リバプールはアウェイゴール一つさえ奪うことができれば、状況が大きく変わる。希望は決して薄くなかった。
しかし、そんなアウェイチームを地獄へ突き落したのは、やはりあの男だった。