「ボールに手や足が吸い寄せられていく」。世界最高の守護神
ダビド・デ・ヘアは2011年にマンチェスター・ユナイテッドに加入して以来、長らく赤い悪魔の絶対的な守護神だった。
正確に言えば加入1年目は当時まだ20歳だったということもあり、線が細く、プレミアリーグの肉弾戦や強烈なミドルシュートへの適応に苦しんだ。プライベートでも、チェーンスーパーのテスコでクリスピー・クリーム・ドーナツを過失で盗むなどの恥ずかしい事件も起こしている。ドーナッツ事件は未だにユナイテッドファンの中では笑い種だ。
そんなスペイン人の面長な若者は次第にマンチェスターの地で神にも等しい存在になっていく。圧倒的な反射速度、シュート対応でスーパーセーブを連発するようになっていったのだ。
特に得意なプレーは二つ。一つはロングシュート対応である。20m前後から放たれた無回転気味の強烈なシュートも難なく処理する。安全に弾くこともあるが、がっちりと手の平でキャッチすることすらある。デ・ヘアを前にすればこぼれ球を詰める行為は無駄であり、そんなスーパーセーブでストライカーたちの心を折ってきた。
そしてもう一つが超至近距離からのシュートストップだ。彼は目の前から放たれたシュートでも異次元の反応速度で足や手が伸ばし、ゴールの外へはじき出す。味方選手のディフレクションにもめっぽうに強く、逆をとられても即座に体勢を取り直してボールに触る。
未だに忘れられないのが2017年12月2日に行われたアウェイのアーセナル戦、プレミアリーグにおける1試合セーブ数トップタイである14セーブを記録し、ユナイテッドの勝利に貢献した試合だろうか。「ボールが手や足に吸い寄せられていく」そんなあり得ない感想を抱くほどに、この日のデ・ヘアは決定機を止めまくった。