フットボールが与えてくれた人生で最も美しい瞬間
毎日のように連絡を取り合っている仲良し兄弟が待ち望んでいた瞬間は、あれから約半年後にようやくやってきた。しかも、2人が同じタイミングでピッチに入る。82分28秒、大前元紀とハイタッチをして兄ダヴィッドが先にピッチ内へと駆けていった。その約20秒後、ドリアンもロメロ・フランクとの交代で試合に入った。
タッチライン際では約3分ほど2人での時間を過ごした。ドリアンは「兄は僕の人生において最も重要な人物の1人だ。そして、タッチラインに立った時、あれは僕の人生において最も特別な瞬間だった。グッドラック、そして試合に集中しよう、愛しているよと話したよ」と明かす。
兄ダヴィッドも弟と同じタイミングでの出場に「ファンタスティック、その一言。本当に特別な瞬間だった。このキャリアで最も美しい経験はずっと僕の記憶に残り続ける」と述べ、さらに「おそらくフットボールが僕たちに与えてくれた人生で最も美しい瞬間だったと思う。タイミングは完璧で、あれ以上のことは僕たちも想像できていなかった。本当に嬉しい」と頬をほころばせた。
試合は1-0で大宮の勝利に終わった。主審によって終了の笛が吹かれて、バブンスキー兄弟は真っ先にお互いのもとに歩み寄り、健闘をたたえあった。わずか10分ほどではあったが、ピッチ上で共有した時間は彼らにとって人生におけるかけがえのない宝物となったに違いない。マケドニアU-21代表で共に戦った経験はあったものの、対戦相手として対峙するのは人生初の出来事だった。
「一緒にグラウンドに入っていくということは、2人にとって特別なモチベーションを与えてくれた。試合が終わって、今は最高の気分だ。僕にとっても兄にとっても特別な時間だった。僕たちは日本にいられて幸せを感じている。自分たちが試合に勝てなかったことだけが悲しいね。それが最も重要なことだったから」
こう語るのは弟のドリアン。一方、兄ダヴィッドも「特別な時間」を幸せそうに振り返る。
「このチャンス、1組の兄弟が、地球の反対側の異国の地で、対戦相手として対峙する。こういうチャンスはそうそう起こるものじゃない。ほとんど奇跡に近いと言っていいと思う。フットボールが僕たちに今日のような特別な瞬間をプレゼントしてくれたんだ」
「同じピッチの上で顔を合わせることが現実になる可能性はもちろんわかっていた。今年はそれをすごく楽しみにしていたし、ああやって同じタイミングで入ることができるとは想像できなかった。ピッチの上で共に時間を過ごせたこと、同じ時間にタッチラインに立ってピッチには入れたことも完璧。本当にスペシャルなことで、感謝している」