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豊川雄太は「日本にない1トップ像」を追求する。目指すはスアレス、ベルギーで得た信頼と自信

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「日本にない1トップ像、俺はそこを追求している」

豊川雄太
ベルギーでは「中学生時代から一緒だった」という植田直通(右)との直接対決も実現【写真:Getty Images】

 こういった狡猾さや賢さは、オイペンという厳しい環境で1トップを経験しなければ、なかなか身につかなかっただろう。豊川は最近、自らのロールモデルとして「ルイス・スアレスの動きは常に分析しています。あとはガブリエル・ジェズスとか。あの2人は常に見ているかな」と語る。

 2人とも南米を代表するストライカーだ。バルセロナに所属するウルグアイ代表のL・スアレスは身長182cm、マンチェスター・シティでプレーするブラジル代表のG・ジェズスも身長175cmと欧州基準ではそれほどおおがらとは言えず、ともにフィジカルに頼るのではなく、駆け引きや一瞬の動きの鋭さを武器に世界屈指のストライカーとしての評価を確立してきた。

 鹿島アントラーズで出場機会の確保に苦しみ、ファジアーノ岡山へのレンタル移籍も経験した24歳は、ベルギーで急成長を遂げ、欧州主要1部リーグで戦えるだけの力を身につけつつある。かつてリオデジャネイロ五輪代表メンバー入りにあと一歩足りない悔しさも味わった。同世代の活躍を刺激に、豊川は独自の路線で高みを目指す。

「(同じリオデジャネイロ五輪世代の南野)拓実だったり(中島)翔哉だったり、やっぱり日本代表で点取っていますしね。負けないように。でもタイプで言っても違うと思うので、こっちで1トップというのを磨きながら、日本にない1トップ像というか、俺はそこを追求しているから。南米じゃないですけど、スアレスとかジェズスとか、そんなに身長はない。でも、やっぱり1トップを張って、あれだけ点を取っているから、俺はそこを目指していますね。日本にないような、ゴールに向かっていって駆け引きするような。まだまだですけど、俺はそこが理想です。今はそこを目標に持って常にやっています」

 豊川は「日本にない、南米のような1トップ」を指標に掲げ、ベルギーで研鑽の日々を過ごしている。成長速度はこの1年で急激に上がった。プレーオフではなかなか結果がついてこないが、残り5試合で年間二桁得点も非現実的な目標というわけではない。

 一方、南野や中島といった同世代の選手たちが輝きを放つ日本代表では、大迫勇也に続くストライカー不在が大きな課題として叫ばれているところだ。

 森保一監督は6月のコパ・アメリカに向けて「南米からはまだまだ学ぶところがたくさんある」と述べ、「南米では“マリーシア”という言葉があったりしますが、流れを読むという部分、よく日本では“ずる賢さ”と言われますが、いろいろな部分で賢さを発揮するということを選手にも学んでほしい」と強調していた。

 クラブでの結果という意味では少々足りていないかもしれない。だが、苦しい状況でも成長と可能性は示している。南米っぽさを追求する豊川が、本気の南米相手に戦い、そこから“ホンモノ”を学んでさらに飛躍する。そんな未来にも、ほんの少し期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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