「日本人で海外でずっと1トップをやれている選手はいない」
試合を終えて取材していると、後ろを通りかかる選手やスタッフたちから次々に声をかけられる。しかも内容は日本語で。
「バーカ、バーカ、バーカ、トヨカワサン」
そう言ってケラケラ笑いながら通り過ぎていく者もいた。突然、「あっちむいてほい!」も始まった。「このゲーム、あいつとよくやっているんですよ。センターバックのジョルダン(・ロティーズ)っていうんですけど」と充実した笑みを浮かべたのは、豊川雄太だ。
2018年1月からベルギー1部のオイペンに所属する24歳は、クラブ内で絶大な信頼を勝ち取っている。記者会見を終えて取材エリアの先から歩いてきたクロード・マケレレ監督も、健闘をねぎらって豊川の肩をポンポンと叩いた。
昨年12月26日のベルギー1部レギュラーシーズン第21節、セルクル・ブルージュ対オイペンを現地で取材した。序盤にロングパス1本で抜け出したママドゥ・ファルがゴールを奪い、その1点を守りきったオイペンがアウェイで貴重な勝ち点3を獲得した試合だった。
今季の豊川は、日本にいた頃からはイメージの異なる選手になっている。起用されているポジションは「1トップ」。4-3-3の頂点、ゴールに最も近い位置でマケレレ監督からの信頼をつかんでいるのだ。
「もっともっと得点を取って信頼を得られるように、来年はより得点という結果にこだわっていきたいなと思っています。いまは日本人で海外でずっと1トップをやれている選手もなかなかいないと思うので。だからすごく楽しいですよ、やりがいがあるし」
ベルギーリーグは先述したセルクル・ブルージュ戦でウィンターブレイクに入り、1月下旬から再開してレギュラーシーズンの残り9試合を消化。現在は順位ごとに分けられたプレーオフを戦っている。オイペンも来季のヨーロッパリーグ出場権をかけて奮闘している最中だ。
そんな中で豊川は21節のセルクル・ブルージュ戦までで4得点、その後の9試合のうち7試合に出場して3得点とペースを上げたが、プレーオフでは未だノーゴール。1トップの選手として決して満足と言える結果が出ているわけではない。