チョン・ソンリョンらしさが光ったセーブ
湘南戦でも安定感が光っていた。60分にはペナルティエリア左に飛び出して反転した山崎凌吾が至近距離から放ったシュートを見事にセーブ。足もとに入ってきた速いボールを的確に処理し、二次攻撃の芽を摘んだ。
さらに74分、川崎F側から見て右サイドからゴール方向に巻いてくるクロスボールに湘南のDFフレイレが頭で合わせた場面。これも至近距離からのヘディングシュートにしっかり反応し、ゴール隅に飛んだ難しいボールを左手1本で弾き出した。
「最後の最後まで集中していた。最後は見えなかったところも少しあったけど、待てた部分は良かった」と本人も納得のプレー。ギリギリまで相手とボールの動きを見極めた上で、即座に反応できたのにもしっかりと理由がある。
チョン・ソンリョンはボールを待って構える姿勢が低く、常に体の前側に重心がかかっている。膝を曲げた状態でつま先立ちして、低い姿勢で頭が少し前に出てくるようなイメージだ。これを90分間保ち、どんなボールがきてもブレずに続けることは非常に難しい。例えば73分の自分に向かってきて、受け手となる相手選手との距離が近くなるようなクロスは特に先に動いてしまいがちだ。
だが、彼は「我慢」する。まずは相手のプレー選択や判断を見て、それに対して反応してどんなプレーをするか即座に判断し、実行に移すのだ。あくまで基本に忠実でありつつ「僕は上半身を上げると自分のプレーができない。人によっては上半身を上げる方が自分のプレーをできると思うけれど、結局は自分の重心を掴まなきゃいけないので」と、自分の体の特徴も把握しながら今のプレースタイルを築き上げてきた。
さらに「GKには冷静さがすごく大事だと思う。勝っていようが、負けていようが、ゴールしようが、ゴールされようが、常に冷静さを忘れないことを大切にしている」とチョン・ソンリョンは言う。ベテランになった川崎Fの背番号1は「失点や数字で見られてしまう、それはGKの運命だよね。でも、それで落ち込んでしまったらGKはできない。すぐに切り替えることが重要だ」と笑っていた。