「ドイツを代表して戦っている」
ゴール裏に現れた巨大なコレオ。無数の揺れる旗。誰もがいつもより高い声を振り絞った。そして長谷部によれば、背中を押してくれるのは、アイントラハトを愛するファンだけではないのだという。
「素晴らしいホームのサポーターが後押しをしてくれる。それだけではなくて、ドイツ中が自分たちに期待してくれているというのを、すごく感じます。それは、ブンデスリーガの試合が終わった後に、相手の選手みんなに『ヨーロッパリーグ頑張れ』って言われるし、そういうドイツの国を代表して今、自分たちは戦っているという感覚もある。それは自分が日本代表でプレーするのとは違う感覚ではあるんですけど、それくらいの、国を背負っているっていう感覚もあります。個人的にはドイツという国に、本当に恩があるので、こういうところでしっかりと返していきたいな、という思いがあります」
チャンピオンズリーグも含め、ヨーロッパの舞台で勝ち残っているのは、今ではフランクフルトだけとなった。ドイツサッカーのプライドを、面目を保つため、「ドイツの国を代表して今、自分たちは戦っている」——。背負っているものがベンフィカとは違った。
フランクフルトの選手たちは、落ち着いた様子で試合に入った。このラウンドを突破するには少なくとも2点が必要だったが、試合が始まるや否やガムシャラに攻めることはなく、冷静にゲームを進めていった。長谷部は「ゲームプラン」について、次のように語る。
「もちろん2-0でも3-1でも勝ち抜けるっていうことだったので、とにかく点を取ることはすごく大事だなと思っていたんですけど、ただ、ゲームプランとしてはそこまでリスクを背負ってやるっていう形ではなくて。しっかり規律、戦術を保ってやれば、しっかり2点は取れるという感覚がやっぱりありましたし、それはミーティングでも話していました。アウェイの試合でも、11対11で戦っている間は全く問題なかった。自分たちの方が良い手応えを感じていました」