ナポリに足りなかったものは?
チームとしての良さが少なからず発揮されており、個々の能力も引き出されていたナポリ。やはり決して弱くはない、むしろ魅力的なチームであることは間違いない。それでも、無得点に終わった。足りなかったのは、最後の最後の部分だ。
ナポリはこの日、実に20本ものシュートをアーセナルに浴びせた。しかし枠内に飛んだのはわずか2本。対してアーセナルは7本のシュートのうち4本を枠内に飛ばした。この決定力の差は、勝敗を大きく分けるポイントになった。
また、組み立ての部分までは良いのだが、ラストパスの場面で精彩を欠くことも多かったナポリ。アーセナルの守備陣は満点の評価に値するほど強固だったが、ホームチームが自分たちでチャンスを捨ててしまう、といったシーンも少なくはなかった。最後のシュートやパスの質。この部分の欠如こそ、ナポリが欧州主要大会でなかなか結果を残せない理由なのではないだろうか。
また、サイドに追いやられた際のオプションの無さも致命的だ。守備時は5バックになるアーセナル守備陣がナポリの特徴が最も引き出される中央エリアを徹底的に封じたことで、ホームチームはサイドに逃げなければならないといったことも多かった。ただ、ナポリはインシーニェを筆頭に空中戦で勝負できる選手が少ない。ミリクは高さもあるが、一人ではどうにもならないのは当たり前だ。
事実、この試合でもサイドから崩しにかかってもPA内にはミリクしかいないという場面がかなり多かった。とくに後半はチームとしての勢いが落ちた影響もあったのか、ナポリの攻撃は単調となり、アーセナルの守備陣にとって脅威となっていなかった。
それに加え、クロスの質も絶望的。とくに後半から右サイドバックに回ったホセ・マリア・カジェホンらは何本かチャンスを無駄にしていた。個人に責任を押し付けることはできないが、もう少しそのあたりの質を上げてほしかったところだ。
現在セリエAで2位につけているナポリ。逆転での優勝はほぼ不可能だが、来季のCL出場権を獲得することが濃厚だ。そのためにも、こうした課題の克服に今から取り掛からなければならないだろう。
(文:小澤祐作)
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