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なぜ、マンCはまたも敗れたのか? 狂わせたトッテナムの“自殺行為”。激戦の戦術を紐解く

text by 内藤秀明 photo by Getty Images

リスキーな初手が全てを狂わせた

 ただ結果論で言えば、ラポルテやバンジャマン・メンディ、そしてダビド・シルバなど、調子の上がらない選手がいたため、そもそも乱打戦の展開にしてしまったこと、乱打戦になったらなったでスパーズを突き放すことができなったことが問題だった。

 普段のシティなら前半にいきなり2失点することはないし、アウェイゴールを奪われてしまったのであれば、割り切って攻めに出て、リスキーな戦い方をしているスパーズに対して前半で3点以上ゴールを決めるポテンシャルもあった。

 ただラポルテが不調で2失点に関わってしまうというイレギュラーが起こってしまったのは計算外だろう。あるいは攻撃面でいうとダビド・シルバの不調が顕著で、調子がいい時には90本以上パスを通してパス成功率も95%を超える男が、この日は63分までプレーしてパス成功本数19本で成功率73%と、ボールを触ることも少なくミスも連発した。

 コンディション不良も問題だったが、せわしないオープンな展開にダビド・シルバも引っ張られ、無理に縦パスを通そうとして引っかかる場面も目立った。

 結論をまとめると、ポチェッティーノのリスキーな采配によってシティは後手を踏み、もともと内包していたコンディション不良というリスクを顕在化させてしまった。

 ボールを保持しているのはシティで、サブの陣容が豊富だったのもシティだったが、その実、試合の主導権を握っていたのはスパーズだったのだ。

 そういう意味では自殺行為に見えたポチェッティーノの初手の時点で試合は少しずつ少しずつ、スパーズに優位な方向に歯車が回り始め、ギリギリだったかもしれないが初となる準決勝進出という大勝利をスパーズは獲得した。

 監督の采配、その妙こそが、このドラマティックなスパーズの勝利を手繰り寄せたのだ。

(文:内藤秀明)

【了】

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