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Jリーグ 6年前

FC琉球が得た手応え。「支配された試合はなかった」。揺るぎないスタイルが勝利につながる【英国人の視点】

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

琉球が見せる驚異の粘り

 昨季のJ3王者は、魅力的なサッカーを展開することに加えて、本物の粘り強さも見せてきた。ヴェルディ戦の95分に上里が決めた衝撃的な同点ゴールも含め、最近の3ポイントの勝ち点はいずれも終盤の得点によりもぎ取ったものだ。

 1週間前のホームでの柏レイソル戦では、上門知樹が82分の同点ゴールで試合を1-1のドローに持ち込むヒーローとなった。3月30日のレノファ山口FC戦では、鈴木孝司が終了間際の89分に2-2とする同点ゴールを決めていた。

 だが、その不屈の精神よりもさらに印象的なのは、試合の流れを引き戻そうとする戦いの中でも、チームの基本理念を犠牲にしたくなる誘惑に屈しようとはしなかったことだ。あくまでもポゼッションスタイルを貫き、最終的にはそれが報われることになった。

 例えばヴェルディ戦では、前半はボール保持率で相手に劣っていた(52%対48%)が、後半には琉球が状況をひっくり返してみせた。90分間を通しての保持率は54%に伸ばし、ホームチームを200本近く上回るパスを繋いだ(474本対643本)。

 終了間際の劇的なゴールで脚光を浴びた上里だが、より重要だったのは試合を通しての彼のパフォーマンスだ。中盤で終始落ち着いた存在であり、冷静にゲームを動かし、顔を上げて選択肢を探し続けていた。

 ファイナルサードまでボールを運び、そこからスピードを上げて意図のあるプレーを繰り出すという明確なプランが最初から存在していた。鈴木の後ろに位置取る2列目のアタッカーは、マークを外して裏へ抜け出したり、素早いワンツーで危険なエリアにスペースを生み出したりすることを常に狙っていた。

 ビハインドを背負ってタイムアップが迫る中でもワンタッチやツータッチのサッカーを続けていた。アディショナルタイムには小泉佳穂と鈴木が絶好のチャンスで枠を捉えられなかったが、最後は上里がGK上福元直人を破ってボールをヴェルディのゴールへ押し込んだ。

 アウェイチームはその後も攻撃の手を緩めようとはせず、最後の3分間は再び勝ち越したいヴェルディと逆転を狙う琉球による一進一退の攻防が繰り広げられた。

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