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アヤックスがユーベを凌駕した戦術的要因とは? 信じられない夜を演出した「我われの哲学」

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

「出ていく選手も多いだろうが…」

アヤックス
アヤックスは「売る側」だが、クラブには一貫した哲学が浸透している【写真:Getty Images】

 戦術的に整理されたプレスで、パスの出しどころを失ったユーベからボールを奪い、アヤックスは一方的に攻撃を続けた。ヴォイチェフ・シュチェスニーの奇跡的なセーブやピャニッチの必死のカバーでなんとか均衡を保っていた相手に対し、先制ゴールのお株を奪うようにコーナーキックで仕留める。決めたのは、C・ロナウドを逃してしまったデ・リフト。このこともまた印象的だった。

 国際的なスターは買ってこれないが、技術の高い選手を見出し、フィジカルを鍛えて一流の選手に育てる。そして、組織としてどういうサッカーを展開するべきかというモデルが、練習を通し各選手に浸透している。これが、アヤックスというクラブの強みだ。

「これは我われの哲学である。今季が終われば出ていく選手も多いだろうが、充実した下部組織やスカウト網から新たな戦力を発掘するのみだ」

 テン・ハーフ監督は、自信を持って言い切っていた。

 現時点でマンチェスター・シティとトッテナム・ホットスパーとの決着はついていないが、オランダ人記者の中からは「(ジョゼップ・グアルディオラ監督のいる)シティなどとの対決は楽しみじゃないですか?」などという質問が飛んでいた。それだけ、今のチームの完成度には自信と期待が高まっているということだ。マドリーとユーベを立て続けに破れば、もはやフロックとは言えないだろう。

 翻って、CL制覇の野望がまたも絶たれたユベントス。C・ロナウドを約1億2000万ユーロ(約150億円)もの移籍金で引っ張ってきたはいいが、見合う成績は出なかった。もっともC・ロナウドが期待外れだったわけではなく、むしろ彼自身は結果を出している。ただここにきて、チーム全体としての不出来の方が目立ってしまった。

 大枚を叩いて戦力を揃えても、それで強力なチームとなるわけではない。メガクラブとして振舞うことに舵を切ったユーベだが、テン・ハーフ監督いわく「本来はマドリーやユーベに選手を引き抜かれる立場」のアヤックスに敗れたこと何かを示唆するようでもある。

「イタリアのクラブはアヤックスのようにはいかない」「我々には選手が故障で欠けていた。これでは良いサッカーはできない」とアッレグリ監督は語っていた。現実的には言葉の通りなのだろうが、『哲学』を堂々と語るテン・ハーフ監督と対照的だったのは否めなかった。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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