ユーベを封じた3つのポイント
ターニングポイントとなったのは、後半の入り方だった。テン・ハーフ監督は試合後の記者会見の中で、試合をひっくり返すための戦略的なポイントを明かした。
「ユーベのプレスは圧倒的だったが、選手たちにはハーフタイムで『あのペースはいつまでも続かない』と言った。そして3つのポイントを修正した」
それがことごとくハマり、アヤックスはユベントスの解体に成功したというわけだ。
まずポイントの1つ目は、中盤の距離感の細かい修正。「フレンキー・デ・ヨングと、ラッセ・シェーネのポジションが開きすぎて、まずそこを修正した」。アヤックスの展開の要であるデ・ヨングに対し、前半のユーベはしっかりプレスを掛けてパスを寸断していた。そこでテン・ハーフ監督は、もう1人のボランチとの位置関係を修正し、ボールをつなぎやすくする。こうして、ユーベに掛けられていたプレスをパスワークでいなし、無力化することに成功した。
2つ目のポイントは「エムレ・ジャンにプレスを掛けること」。この日、ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、中盤の底で攻守の切り替えを担う役割をレジスタをミラレム・ピャニッチではなく、屈強なドイツ代表MFに任せていた。こうして組み立て役のピャニッチをプレスから逃す役割もあったのだが、テン・ハーフはそこに狙いをつける。トップ下のファン・デ・ベークや1トップのドゥシャン・タディッチが代わるがわるプレッシャーを掛けて、エムレ・ジャンのパス出しを封じる。こうして彼らは、ユーベの展開を破壊した。
そして3つ目は、「サイドの選手を高い位置に張りつけること」。ユーベのプレスを機能不全に陥らせ、パスの展開を壊した後は、敵の守備陣を切り裂くことが次の狙いとなる。ユーベのプレスに押されてやや低い位置を取りがちだったダビド・ネレスやハキム・ジィエフを高い位置に張らせ、サイドバックにも積極的な攻撃参加を要求。その結果ユーベの左右のサイドバックは高い位置に攻められないどころか、ボールを奪われてカウンターを食らうこととなった。
一方のユベントスは、パウロ・ディバラを故障で失い急成長中のモイーズ・キーンを投入する。ところが、ディバラが担っていたデ・ヨングへのプレスの役割をキーンにも他の選手にも割り振らなかった。相手がデ・ヨングを自由にしようとした傍らで、それを助けるような真似をすれば苦戦も必至。もはや試合はそうなるべくしてひっくり返ったようなものだった。