アヤックスが過ごした「信じられない夜」
選手たちはピッチで歓喜の雄叫びをあげ、アウェイサポーター席は沸き立つ。もうすでにかなりのユベントスファンが立ち去っていたアリアンツ・スタジアムの他のスタンドからも、拍手が起こっていた。一般席のチケットを入手して応援していたオランダ人ファンだ。
「レアル・マドリーに続き、優勝候補を立て続けに破るとは。アヤックスにとって、またオランダサッカーにとっても、信じられない夜となったよ」
試合後の記者会見で、エリック・テン・ハーフ監督は顔を紅潮させた。1stレグで食らったアウェイゴールの影響を全く感じさせない積極的な攻撃サッカーを貫徹し、アヤックスはユベントスに勝利した。
前半、主導権はユベントスの掌中にあった。試合開始から積極的にプレスを掛け、ボールを奪っては早いテンポで攻撃を仕掛ける。そして28分に右コーナーキックを得ると、クリスティアーノ・ロナウドがまたも凄まじい動きでマークを外してヘディングシュート。ファーサイドからループ気味に加速してマーカーのマタイス・デ・リフトから離れると、ニアサイドに突っ込んで頭を合わせる。慌てたデ・リフトは中央で味方と交錯し、それが原因でビデオ判定の対象にもなるほどだった。
もっとも、その6分後に試合は1-1に。右サイドの守備のため深い位置に下がっていたフェデリコ・ベルナルデスキが戻り遅れて、ドニー・ファン・デ・ベークをオフサイドポジションに残し損なってしまった。とはいえそれは、いわば事故のようなもの。意気消沈してしまう部分はあっただろうが、前半までの試合のペースを維持できれば勝機はユーベにもあったはずだ。
しかし、そうはならなかった。後半になるとユベントスを圧倒したのはアヤックス。一方的に攻め続け、逆転ゴールを奪うのみならず、相手に反撃のチャンスも作らせなかった。格下相手への油断、といった単に精神的な要因というだけでは、こうはなるまい。この試合は技術的、または戦術的な要因が大きく影響してひっくり返ったものだ。