監督の采配は正しかったのか。そして勝負の行方は?
最後に、この日のスールシャール監督は今ある戦力の中でベストな選択と戦術で試合に臨んだが、試合中の采配については別の選択肢もあったかもしれない。
68分に前線で起点になっていたルカクを外して、アントニー・マルシャルを投入したのだが、結果的に言うとこの采配は裏目に出てしまった。スールシャール監督はルカクを下げた理由を「疲労のため」と説明したが、もう少し引っ張ってもよかったかもしれない。
それでも鋭いドリブル突破や高いシュートセンスを持つマルシャルを早く投入したかったのであれば、シュートが安定しないラッシュフォードを下げてもよかったかもしれない。
確かにこのイングランド代表ストライカーには強烈なミドルという飛び道具があり、パリSG戦の2ndレグでも彼のミドルのこぼれ球からゴールが生まれている。パリ戦もバルセロナ戦同様にコンディションは良くなかったが、数打っているうちの一つが結果に繋がった形だ。
近しい事象が起こることをスールシャール監督は期待していたのかもしれないが、最後までラッシュフォードのシュートは枠をとらえることができなかった。
若干の采配ミスはあったかもしれないが、スールシャール監督はチームの力を最大化したし、違う日であればまた結果も変わったかもしれない。
なにより1点差の敗退ならまだ可能性はある。今季のユナイテッドはアウェイのほうが成績もとく、PSG戦もアウェイで2点差をひっくり返している。
監督自身も今日の結果に悲観していないようだ。試合後の記者会見ではPSGとの対戦で大逆転劇を演じた実績を引き合いに出しつつ「希望は残っているし逆転できると信じている。もちろんバルセロナは優勝本命だしカンプノウでの試合は簡単ではないけどね」と明かしている。
ホームでの戦い方が悪くなかったため原則2ndレグでもユナイテッドの戦い方はほぼ変わらないはずだ。変更が必要なのは、累積で次戦は出場停止となるルーク・ショーのポジションだろうか。3バックの一角に誰を加えるかは気になるポイントだ。
いずれにしても戦術を実行する選手たちのパフォーマンスを高めるために、コンディショニング含めてきちんと準備を進めたい。あとは選手時代同様にスールシャール監督が「カンプノウの奇跡」を起こすことに期待したいと思う。
(文:内藤秀明)
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