「PSGは、将来に賭けているクラブです」
彼らが目指しているのは、まったく新しい国際的なサッカークラブの姿というわけだ。しかしさらに納得がいったのは、アレグル氏がその後続けた言葉の方だった。
「PSGは、将来に賭けているクラブです。我々は、欧州の強豪クラブの中で一番若い。でも、なかった歴史をたどることはできない。我々がようやく100周年を迎えた時、彼らは200年、300年とさらに歴史を重ねている。この差は永遠に埋められないんです。ならば同じことをしても意味がない。だから我々は「未来」に投資する。「明日のサッカーのビジョン」に賭けるんです」
現在建設中のトレーニング場も、これまで見たこともないような、最新設備を揃えた施設になるという。
「我々はサッカークラブであることは忘れていない。ただ先を見据えているだけです」
PSGの前は音楽畑にいたというアレグル氏は、サッカーに関しては明るくない。しかしだからこそ、「サッカークラブはこうあるべき」という凝り固まった考えなしにいろいろな挑戦ができるのだという。2016年から参戦しているe-Sportsもそのひとつだ。
彼らの狙いどおり、パルク・デ・プランスは、セレブの社交場となり、PSGは「なんかかっこいいじゃん!」というイメージを持ったクラブになっている。
そこにいにしえのサッカー場の雰囲気はないし、歴史に残る名勝負といったら、2017年のCLでのバルセロナの1-6大逆転や、今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのドンデン返しのような、涙を飲んだ方ばかりが思いつくありさまだが、他のビッグクラブのような歴史を持たない彼らは、潔く我が道を行くことを決めた。
それにもちろん、イメージの浸透だけで喜んでいるわけではない。美味しいのは、それがもたらす金銭的な利益だ。
知名度や注目度が上がることは、商品の売り上げという直接的な利益とともに、「潤っている」という印象をも植え付ける。「だから収入は増える一方なのでご心配なく、とみなさんに申し上げている」と、ファイナンシャル・フェアプレー対策にも有効であると会長も話していた。
まだまだ計画中のプランはたくさんあるという。PSGが目指す「新しいクラブのあり方」というものを、これからもとくと見せていただくことにしよう。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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