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韓国サッカー界を揺るがした「政治」の介入。まさに恥晒し、前代未聞の事件はなぜ起きたのか?

韓国サッカー界が、予期せぬ事態に揺れている。国会議員選挙の候補者がリーグ規定を無視してスタジアム内で遊説を行ったのである。日本では考えられない「政治」のスポーツへの介入。前代未聞の事件はなぜ起きてしまったのか。その背景を韓国在住記者がレポートする。(取材・文:キム・ドンヒョン【韓国】)

text by キム・ドンヒョン photo by Getty Images, Liberty Korea Party

韓国クラブと政治の密接な関係

慶南FC 邦本
慶南FCは今季のACLにも出場し、邦本宜裕(中央)も在籍中のクラブ【写真:Getty Images】

 3月30日に行われたKリーグ1(韓国1部)第4節・慶南FC対大邱FCで、あってはならない前代未聞の大事件が起きてしまった。

 韓国最大野党である自由韓国党のファン・ギョアン代表と、彼が支持するカン・ギユン候補が慶南FCのホームスタジアム、昌原(チャンオン)サッカーセンターに乱入。サッカーを見に来た6173人の観客を相手に遊説を行ったのである。

 4月3日に行われる補欠選挙に伴う遊説活動の一環だった。これまでは韓国第2与党である正義党のノ・フェチャン氏がこの地域の国会議員だったが、彼は昨年突然自殺しており、その後を継ぐ新たな議員を決める選挙を目前に控えていた。もちろん選挙区内では遊説が行われて当然のこと。では何が問題なのか。それは場所だ。

 Kリーグの規定によるとスタジアム外での遊説は抵触せず。しかしスタジアム内での遊説は厳しく禁じてられている。リーグ規定第5条に「政治的中立の義務」がしっかりと定められており、「行政及び事業を遂行する上、政治的な中立を守る」と記されている。

 これに違反した場合の処罰も相当に厳格だ。「ホームチームは10点以上の勝ち点はく奪、または無観客試合および連盟が指定する第3地域でのホームゲーム開催、2000万ウォン(約200万円)以上の制裁金、警告などの懲戒処分を受ける」と定められている。

 Jリーグに比べ、Kリーグ1部のクラブが政治家たちと親密な関係を築いているのは確かだ。日本の都道府県にあたる市や道が直接運営するクラブは、その自治体長がオーナーを務めることになっているからでもある。

 城南FCや大邱FC、そして今回の不祥事に襲われた慶南FCも、すべて自治体長がオーナーを務めている。だが、自治体長が任命する代表理事がクラブ経営のほとんどを担っており、政治家たちが直接かかわることはできない。前述したルールが政治的な活動の介入を未然に防いでいるのだ。

 Kリーグや韓国選挙管理委員会によると今まで何人かの政治家たちが場内遊説を問い合わせてきたが、このルールに則ってすべて断ってきた。過去にスタジアム内で実際に遊説が行われたことは全くなかったという。

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