センターFWではなく8番タイプ
こうしてボルシアMGとの一戦を1-1のドローに終えたブレーメン。6位のVfLヴォルフスブルクとの勝ち点差を2とし、目標である来季ヨーロッパリーグ(EL)出場権の獲得に望みを繋いだ。復帰初戦でその立役者となったが、大迫は、謙虚な姿勢を崩さない。
「結果が出たことは良かったですけど、もっともっと得点に関わりながらやりたいです。
後半からだったので、相手も疲れた状態だったので、しっかりとスペースもありましたし。もっとね、2か月仕事をサボっていた人間だから、何ができるか、もっと見せないといけないです」
ブレーメンでの大迫の強みは、日本代表でのそれとはまるで異なる。ワントップのポジションで先発し、敵のDFを背負ってのポストプレーを求められることはない。フロリアン・コーフェルト監督は、大迫のことをセンターFWというよりは、どちらかというと8番タイプのユーティリティ・プレイヤーと見ているようだ。
試合中のフォーメーションチェンジにも柔軟に対応し、複数のポジションをこなすことの出来る戦術理解度の高さ。1.FCケルン時代の監督ペーター・シュテーガーも評価した正確なパスワーク。ブンデスリーガでの大迫は、こうした幅の広い強みを持っている。好んで複数のシステムを用いるコーフェルト監督が、こうした特徴を持つ日本人FWを重用するのも頷けるところだ。
そして今回のボルシアMG戦で、状態が万全ではなくともきっちり仕事を果たしたことで、36歳の青年監督の大迫への信頼は、一層厚くなったのではないか。2ヶ月近くも厄介な負傷に辛抱強く寄り添ってくれた、コーフェルト監督である。
“復帰”を遂げた後で、大迫は、次のように喜んだ。
「こうやってまたピッチに立てたことが、幸せだと感じましたし、このモチベーションでシーズン最後までやりたいと思います」
少しの間ピッチを離れたことで、サッカー選手としての「幸せ」を改めて実感した大迫。シーズンの終わりに掛けて、貴重な戦力として、ブレーメンのEL出場権を目指す戦いに貢献してくれるに違いない。
(取材・文:本田千尋【メンヒェングラートバッハ】)
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