試合のキーマンはまさかの…
先にも述べた通り、アーセナルはスコア以上の完敗を喫した形となった。アウェイでの戦いが苦手とはいえ、ビッグ6以外のチームにここまで圧倒されることは珍しい。
敗北の最大の原因を挙げるとすれば、カウンターを阻止できなかった点にあるだろう。エバートンの素早い攻撃に対し、対策を練ることができていなかったのだ。
ではエバートンのカウンターのキーマンとなっていたのは誰なのだろうか。ここではGKジョーダン・ピックフォードを取り上げたい。
イングランド代表でも正守護神を務めるレフティーは正確なロングフィードと抜群のキック力が持ち味で、短い助走でも簡単に相手陣内深くまでボールを蹴ることができる。
これによりエバートンは、GKまでボールを下げてもピックフォードのキック一つでカウンターに繋げられるという大きな武器を発揮することができた。そして高く浮かんだボールを最前線のキャルバート=ルーウィンが自慢の跳躍力を生かしてボールをフリック。そこにベルナルジやリシャルリソンが絡んで攻撃を開始する。この試合ではこうした場面がいくつも見受けられた。バックパスの処理からチャンスに結びつけるというのは決して簡単ではないが、ピックフォードはそれを可能にしたと言えるだろう。
カウンター以外でもゴールキックからこうしたシーンを作ったエバートン。アーセナルのシュコドラン・ムスタフィやソクラティス・パパスタソプーロスはキャルバート=ルーウィンに競り負けることも多く、そこでしっかりボールを跳ね返せなかったのはかなり痛かった。
仮にエバートンが最終ラインから丁寧にボールを繋ぐスタイルを取っていた場合、アーセナルの素早いプレスに捕まり、これほどシュートを放つことができなかったかもしれない。しかし、ピックフォードを筆頭に、エバートンの選手たちはなんの躊躇いもなく前線へ長いボールを蹴り込むため、アウェイチームはプレッシャーを高い位置で始めることができず、自分たちの持ち味を発揮することができなかったのだ。
セービング自体は決して多くなかったピックフォードだが、その代わりに攻撃面で存在感を発揮できることは大きい。改めて、GKというポジションの重要性がわかった気がする。
(文:小澤祐作)
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