バルサは相手の力をも糧にする
決してバルサが押し込み続けたわけではなく、アトレティコもボールを奪ったら大事に繋ぎつつ、ドリブルで剥がしたりと状況の打開を試みた。前に人数は割けないが、バルサとしても油断できない展開になっていた。
それもあってバルサはいわゆる攻め疲れの状態にはなってない。21:9とシュート数で圧倒的する展開となったが、緊張感もある中でゲームが進んだため攻撃は散漫にならなかった。その意味では、勝たなければ優勝が絶望的となるアトレティコの姿勢が、バルサにもいい影響を与えたと言える。
そして、鍵がかけられた扉が開いたのは85分だ。ゴールをこじ開けたのはスアレスだった。85分、PA外左寄りでボールを受けると、右足で狙い澄ましたシュートを放つ。再三にわたってビッグセーブを見せていたオブラクが懸命に腕を伸ばしたが、届かない。ボールはポストの内側に当たってゴールに吸い込まれた。抜群の一撃で、バルサがついに試合を動かした。
スアレスはこの日5本のシュートを放っているが、打つたびに感覚が研ぎ澄まされていったような印象だ。ただ蹴りこむだけではオブラクの牙城は崩せないという中、終盤にあの一撃を見舞った。オブラクが見せた数々のセーブが、スアレスの点取り屋としての本能を刺激したと言えるのではないか。
一人少ない中でもアトレティコは力を示し、特にオブラクは出色だった。バルサは相手守護神のビッグプレーの前に沈黙していたが、それを上回ったのが85分のシーンだった。試合の中で触発され、そしてスアレスのビューティフルゴールが生まれた。バルサは相手の力をも糧にし、優勝へとまい進する。
(文:青木務)
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