藤本憲明のあるプレーに「僕の好きな感覚だね」
伊藤がキャリアを積み重ねる中で成熟していったように、大分トリニータの藤本憲明にも同じことが言える。JFLから始まってJ3、J2、J1とステージを上げてきた。
ここまで5点を挙げていて、J1でも十分戦えることを証明しているね。大分というチームのベースがあって、しっかり繋げるスタイルで積み上げてきた。その中に藤本というストライカーがいるんだけど、彼はスピードだよね。足元も上手いし、ドリブルもできる。下のカテゴリーから積み重ねていってゴールの感覚というのが彼にはある。ずっと点数を取ってきているわけだからね。
シュートのパターンも多いよね。ニアサイドでも点数を取れるし、この前は右サイドからマイナス気味のクロスが来たんだけど、藤本は直接打てないと思ったら胸でトラップしたんだ。シュートは上にふかしてしまったけど、ああいうのは僕の好きな感覚だね。
あそこで普通の日本人だったら、無理してヘディングで打とうとすると思うんだけど、彼はちょっと体を開いて胸でトラップして打った。自分で下から積み重ねてきているから、できることが変わっていない。それは凄いことだよ。
(リオネル・)メッシが何で凄いかといったら、小さい時のプレーが今でも出せるから。藤本も相手のレベルが上がる中でもプレーが変わらない、という選手だね。面白い感覚を持っているよ。ニアサイドでヒールで点数を取った試合もあったけど、あれも感覚。成功したことがあって、それが残っているからできる。あれでいいんだよ。
ディフェンスからすると、あんな決められ方はたまったもんじゃないよ。ああいうのが大事だし、それを忘れないようにプレーできる自分のポテンシャルを持っているんだよね。胸のトラップにしたって、「そんなところじゃ無理だよ」と言われるかもしれないけど、ゴール前でトラップしたっていいよね。
相手のレベルやカテゴリーが上がる中でもプレーが変わらない、とうのは究極だよ。フォワードにとっては特に。そこには何か特別な武器がないといけないけど、藤本はそれが持てているよ。下のカテゴリーから培ってきて、時間はかかったかもしれないけど叩き上げで。魅力的だよね。
▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。
【了】