約2年ぶりに先発。なぜ可能となったのか?
この試合では2点のビハインドを背負い、交代のカードが残り1枚という状況でも、エジソン・アラウージョ・タヴァレス監督から声はかからなかった。カズではなくボランチを主戦場とする20歳の山本凌太郎を、デビュー戦となるピッチへ送り出した理由を、試合後にブラジル人指揮官へ直撃した。
「カズを入れる選択肢もあったが、そうするとイバ、斉藤、カズの3トップになり、中盤の力が少し足りなくなると考えた。相手は中盤に5人がいたので、我々も中盤をしっかり固める必要があった」
試合はそのまま敗れ、昨季は一度も喫しなかった連敗で横浜FCはシーズンをスタートさせた。そして、アウェーの栃木SC戦、ホームのアルビレックス新潟戦と再びベンチ外になったカズは、ホームにFC岐阜を迎えた3月23日の第5節で今季初出場を果たす。
しかも、後半途中からの出場ではない。2017年4月15日のFC町田ゼルビア戦以来、約2年ぶりに前半のキックオフを告げる主審のホイッスルをピッチ上で聞いた。リーグ戦に限れば、タヴァレス体制になって51試合目にして初めて先発を託された。
「監督からは『後半の5分から10分くらいまで』とは言われていたので、そこまではチームを勝ちにもっていける状況でイバと交代できたら、と考えていた。残念ながらゴールは決められなかったけど、チームが勝つことがサッカーでは一番大事なので。0-0の状況でバトンを渡せたことで、最低限の仕事はできたと思う」
カズに代わって54分に投入されたエースストライカーのイバが、3分後にPKを決めて先制。終了間際にはジュビロから加入したMF松浦拓弥がダメを押し、快勝した試合後の取材エリア。満足感とゴールを決められなかった悔しさを、カズはその表情に同居させていた。
【次ページ】ベンチ入りしないことの利点