「対策」を乗り越えた先にあるもの
右サイドバックの松原の立ち位置を調整してビルドアップの起点の1つとしてプレーさせたり、インサイドハーフの三好がポジションを下げてボールを捌いたり、いくつかオプションは見えてきている。それを状況に応じていかに効果的に見つけ出し、チーム全体の共通意識としてオートマチックな動きに落とし込んでいくかが難しいところだ。
「やっているうちにだんだん、こういう動きをしたら相手は嫌がるなというのはわかってきますし、偶然通した縦パスとかがきれいにつながったら、こういうのがチャンスになるんだというところから、また組み立てのイメージが湧いてくるので、そこは変に相手がこうくるからこうというプランは決めすぎない方が自分にとってもやりやすいかなと思います」
畠中はサラリと言ってのけるが、これが一番難しい。だが、前の試合までのプレーを元に強力なマリノス対策を携えて向かってくるチームはこれからも出てくるだろう。22人が常に動き続けるピッチの上で、相手の布陣の穴になりうる立ち位置を見つけ、利用していく賢さと、戦術的な理解度が今後は一層求められてくる。ある意味チームとしてブレイクスルーを遂げるチャンスでもあるだろう。
「1つ言えるのは、自分たちがそれ(対策を立てられる)だけのチームになったということ。相手も1週間非公開で(練習を)やってきたというのも見ましたし、すごく気合いが入ってるなと思って。そういった『この1試合に勝てればいい』というチームには絶対に負けたくないと思っているし、絶対にそういうチームは優勝争いできないと思っているので、本当にそれを結果で表すしかないのかなと」
天野は自分たちのサッカーを封じようとしてくる相手が出てきたことを歓迎している。「勝たなければいけない試合だった」とその策を上回る中で成長も感じながら。マリノスが試合の中での修正力を身につけられれば鬼に金棒。大分戦、鳥栖戦で勝ち星を逃したことを教訓に、チームとして飛躍する大きなチャンスだ。
(取材・文:舩木渉)
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