1人で1人以上をケアする守備
高橋秀人は「最後は結構力負けというか、相手がそれ(効果的なパスの出し入れ)を何回も何回もやるが故に、自分たちの体力とかが奪われてしまった」と70分を過ぎてから徐々にプレッシングが効かなくなってきて、マリノスに波状攻撃を浴びたことを悔やんでいたが、自分たちのプランにも手応えを感じていたようだった。
当初の狙いは2トップでマリノスのセンターバック2人とアンカーをケアすることだったが、それでは2対3で数的不利になってしまい、技術の高い選手には簡単に外されてしまう。そのためアンカーの喜田に対しては状況に応じてセントラルMFの高橋秀人や福田晃斗が前に出てけん制していた。
さらに本来は中央でのプレーを得意としながら両サイドに配置された高橋義希と原川力は、マリノスのサイドバックの攻め上がりを阻止しつつ、内側へ絞る動きにも対応。天野と三好康児のインサイドハーフ2人が、鳥栖のサイドバックとセンターバックの間を狙う動きにも複数の選手が目を光らせていた。
例えばマリノスは1トップなので、左サイドに天野が飛び出してきたら、エジガル・ジュニオのマークを左センターバックのカルロ・ブルシッチに任せ、右センターバックの藤田優人や、右セントラルMFの高橋秀人がケアするといった具合である。
喜田も「常に相手の2トップのどちらかとボランチ(セントラルMF)がついてきている感じがした」と話しており、データ上でもこれまでの4試合で平均49.5本あったパスレシーブが鳥栖戦では36本に減っていることから、豊田と金崎を起点にした各選手が1人以上をケアするプレッシングが効果をあげていたことがわかる。
とはいえ、これはあくまで原則の話。高橋秀人が言っていたように、1人ひとりのタスクが多かったが故に「自分たちの体力とかが奪われてしまっ」て、60分を過ぎると鳥栖のプレッシングの強度も明らかに落ちた。GK大久保択生のセーブなどもあってなんとか無失点で耐えたが、結局のところシュートはマリノスが20対6で鳥栖を大きく上回り、2度のクロスバー直撃もあった。
マリノスとしては喜田を経由しない形で攻撃を組み立てていく道筋は見えてきているようにも思えるが、楽観視してはいけない。「チームとして1タッチの回数を増やして相手のスライドを遅らせたところを突いていこうというのは話していたんですけど、1人ひとりのボールを持つ時間がちょっと長かったりとか、うまくいかない部分もあって、うまく守られてしまった」と畠中が語るように、普段ほどテンポが上がらずもどかしさは残った。