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ウイニングイレブン日本代表選手の実像。“ゲームに人生を救われた”。eスポーツを文化に

text by 玉利剛一 photo by Koichi Tamari

国体競技にも採用「僕がeスポーツに恩返しをする番」

「eスポーツ大会で初めて優勝した時は一生懸命やってきたことが間違いではなかったんだと報われた気持ちになりました。きっと今後の人生でも自信になると思います。ターニングポイントとなった大会は2018年の東京ゲームショウでの優勝。これを機にあのNHKさんが僕に密着してドキュメンタリー番組を放送しましたから。反響はすごくて、色んなeスポーツ関係の方から声をかけて頂く機会も増えました。友人から観た感想を言われたのも嬉しかったですね。そして何より、親がゲームをしてても怒らなくなった!(笑)」

 2018年10月には大会での実績が評価され愛知県のeスポーツ実業団チーム「キュアノス(https://esports-kyanos.com/)」に入団。遠征費やトレーニング環境などのサポートを受け2019年2月にはウイニングイレブンのワールドカップにあたる「PES League」に日本代表として出場する権利を得るなど順調な社会人としての再スタートを果たす。

 しかし、決して状況が安泰という訳ではない。「eスポーツはスポーツではない」と昨今のブームに反対する層は一定数存在するし、eスポーツ推進がゲーム依存症につながるリスクなども懸念されている。完全に市民権を得られたとはいけない中で井上にはプロ選手として個人成績以外での貢献も求められる。

「世間的にはまだまだeスポーツはただの娯楽として捉えられちゃうことや依存症へ懸念など現状は認識しています。だけど、それはeスポーツの本質じゃない。最近は毎週末のように全国のイベントに選手やゲストとして参加しているんですが、例えば(eスポーツは)コミュニケーションツールとしてもポテンシャルが高いことを感じています。年齢性別関係なく楽しめるから、家族はもちろん、社内であればゴルフや飲み会に代わるツールとしても機能するはずです。そういう楽しさや魅力をしっかり広報することもプロ選手の責務だと思っています」

 日本のeスポーツがブームで終わるか、文化として定着するか。今年は茨城で開催される国体競技としてウイニングイレブンが採用されるなど分岐点が近づきつつある。ゲームに人生を救われた男だからこそ果たせる役割はきっと存在するだろう。

「eスポーツは僕に夢や目標、そして、価値を与えてくれたものです。今度は僕がeスポーツに恩返しをする番。僕の人生も日本のeスポーツもまだ道半ば。本番はこれからですよ」

(取材・文:玉利剛一)

【了】

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