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Jリーグ 6年前

稲本潤一は今、どうしているのか? あのゴールから17年…日本を沸かせた男が選んだJ3での挑戦

text by 藤江直人 photo by Getty Images

行政をも動かしつつある行動力

稲本潤一
かつての仲間たちが次々に引退。川口能活(右)や中澤佑二(左)も昨季限りでスパイクを脱いだ【写真:Getty Images】

 もちろん、90分間ベンチに座っているだけでも、あるいはウォーミングアップにあてているだけでもない。移籍決定時に「自分の経験や知識のすべてを生かしたい」と決意を表明した稲本は、新たなチームメイトたちの一挙手一投足を微に入り細を穿って見つめている。

「技術やフィジカル的なスピードの部分で、思っていたよりしっかりした選手が多いという印象です。ただ、練習ではよくても、実際の試合で激しいプレッシャーを受けたときにその技術を使えていない、と見ていてすごく感じる。もっと落ち着いてプレーすればいいのに、そんなに焦ることはないのに、と思うことが多いですけど、そのへんは経験を積んでいくか、練習の段階からどのように意識していくかだと思うんですよね。とにかく僕から言っていく、しっかり伝えていくことは重要ですよね」

 今季の相模原は、アルビレックス新潟から加入した36歳のDF富澤清太郎がキャプテンに就任。ファジアーノ岡山から加入した31歳のMF末吉隼也、在籍2年目で33歳のDF丹羽竜平、同3年目で31歳のMF千明聖典と経験豊富なベテラン勢が副キャプテンとしてサポートする。

 そして、チーム最年長の稲本は新設された「メンター」に就任。国際Aマッチ出場82試合、J1通算225試合出場という実績に加えて、イングランド、ウェールズ、トルコ、ドイツ、フランスでプレーした濃密な経験を生かして、若手や中堅選手たちにアドバイスを送り、相談などを受ける役割を担う。

 相模原でプレーした3年間を最後に、昨季限りで四半世紀におよんだ現役生活に別れを告げた川口能活氏が、使用している練習場のシャワーが冷水しか出ない事情を相模原市の加山俊夫市長に訴えたことがある。引退間際のやり取りだったが、わずか3ヶ月足らずが経過したいまでは、一部の施設で選手たちが待ち焦がれてきたお湯が出るようになったという。

 冷水しか出ない施設ではさすがにシャワーを浴びられない、と苦笑いする稲本は、川口氏が担ってきたチームを代表する「顔」をも引き継ぎ、すでに行政を動かしつつある。

「練習を天然芝のグラウンドでできへんから、試合前にはこのスタジアムを使わせてほしい、と」

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