今年で40歳。満身創痍でも…
札幌退団を受けて電光石火で動いた、相模原の創設者にしていま現在は代表取締役会長を務める、元日本代表の望月重良氏の熱意が稲本を動かした。昨季のリーグ戦は途中出場で2試合、わずか9分間の出場にとどまった。ベンチメンバーとして試合を見届けたのも3度だけ。それでも、退団後の選択肢のなかに「引退」の2文字はなかったと屈託なく笑う。
「もちろん、はじめから(現役で)やるつもりではいたので。試合勘に関しては何とかできる感じはあるので、まずはしっかりコンディションを整えて、ですね。ピッチに立てればやれることも多いと思うので。練習試合にも出られなかった状態が続いていたから」
J2およびJ3リーグは、国際Aマッチウイークでも中断することなく開催される。ガイナーレ鳥取を2-1で振り切り、今季初勝利をあげた24日の明治安田生命J3リーグ第3節。勝利を喜ぶ雄叫びがホームの相模原ギオンスタジアムに響きわたったなかで、稲本はベンチで90分間を見届けている。
実は新天地で本格的な練習をスタートさせてからしばらくして、右太ももの裏に張りを覚えるようになった。札幌時代の2016年6月に、稲本は右ひざ前十字じん帯断裂している。シーズンを棒に振った、全治8ヶ月の大けがが影響していると稲本本人は感じている。
「痛みはないんですけど、何か肉離れになりそうな、ならへんような。走っていると張りが出てくる。多分、手術して前十字じん帯の外側の腱を取っているので、いまは右太ももの裏の外側が張っているんですよね。マジで人工芝は足にきますから。連続した動きになると、けっこうすごいですね」
神奈川県相模原市内や近隣の同海老名市内にある数ヶ所のグラウンドを、相模原は練習場として使用している。しかし、いずれも反発の強い人工芝のピッチであり、時間の経過とともに完治した古傷に影響がかかり、かばって練習するうちに周辺の筋肉に余計な負荷がかかったのだろう。
肉離れを引き起こしてしまえば、長期離脱を強いられかねない。それでも体と会話を重ねながら開幕戦からベンチ入りを続け、86分から投入された直後に勝ち越し点を奪われたものの、ザスパクサツ群馬とのJ3第2節でデビューも果たした。鳥取戦後には「チームが勝てればいい」と笑顔を弾けさせながら、生来のポジティブな性格で前を見すえている。
「まあ、(人工芝には)慣れるらしいので。慣れていけるように頑張っていきます」