ネガティブをポジティブにかえる人物
また、ローンで修行している若者のなかにも、新チームの軸になれるタレントは少なくない。タミー・エイブラハムはアストンヴィラ(チャンピオンシップ=2部相当)で21ゴールを挙げ、ミッドランズの名門のプレミアリーグ復帰に力を注いでいる。
メイソン・マウント(ダービー=チャンピオンシップ)は、17年のU19ヨーロッパ選手権でイングランドが優勝した当時の主力であり、大会のMVPにも選ばれた逸材中の逸材だ。また、ミチュ・バチュアイ(クリスタルパレス)はトッテナムが触手を伸ばしたことでも分かるように、そのポテンシャルは非常に高い。彼らの活用法はいくらでもあるはずだ。
首脳陣も一気に若返りを図るべきだ。気の毒だが、サッリは今シーズン限りで退任。ステップアップを目論んでナポリからチェルシーにやって来たにもかかわらず、補強禁止とか若手中心の制限が加えられとしたら、モチベーションが低下する。
代わって監督に就任するのは、あのレジェンドしかいない。ネガティブな状況下でも、彼ならば快く新生チェルシーの監督を引き受けてくれるだろう。本拠スタンフォード・ブリッジには、いまだにSUPER FRANKEYというバナーが掲げられている。
フランク・ランパード(現ダービー監督)の起用によって、《チェルシーによるチェルシーのための完全リ・スタート》をアピールする。多くのサポーターも心躍らせるに違いない。
二年も補強できないのだからあきらめもつく。その間を既存戦力でうやむやに終わらせるのではなく、明るい未来の準備期間として共有できるのなら、スタンフォード・ブリッジも希望に包まれていくはずだ。そして数年後、ポテンシャル豊かな若者たちによってタイトルを奪還したとき、胸を張って叫んでやればいい。
「俺たちは全員アカデミー出身だ。貴様らのように、カネで創ったわけじゃねぇんだよ」
(文:粕谷秀樹)
【了】