日本代表に定着できるか
だが、すでに述べた通り乾は相手に警戒されていて、実際にサイドチェンジのパスが通っても複数のディフェンスに囲まれてしまう場面も散見された。乾も徐々に自分ではなく周りを活かすプレーに切り替えているようにも見えた。では、ここで森保監督が掲げる「臨機応変な対応力」という点を意識するなら、日本に何ができたのか。
仮定の話になってしまうが、右サイドMFに入っていた宇佐美貴史にポジションを守らせ、左から右へのサイドチェンジのパスを活用しても良かったのではないだろうか。低い位置での相手を引きつけるパス回しはサイドを問わずできていたし、サイドチェンジが両方からくるとなればボリビアの守備陣も混乱したはずだ。
そこで畠中には相手のプレッシャーの弱い左センターバックの位置から、右サイドへのロングパスという選択肢も、これからは持っておく必要があるかもしれない。普段からのパススピードや強さを上げることも去ることながら、いざという時にロングパスというオプションは今後の伸びしろになる。
ボリビアによる迫力ある攻撃の場面はごくわずかで、正直なところ国際レベルで畠中の対人能力が試される場面はなかった。故にセンターバックとして本来求められる守備能力が問われる場面もほとんどなかったが、攻撃面でビルドアップに効果的に関われることは存分に示した。最終ラインからあれだけ高精度のパスを両足で、かつ全方向に蹴ることができるのは魅力的だ。
マリノスでチームメイトの天野が「Jリーグでもほとんど見ないタイプ」と絶賛するのも納得。貴重な能力を持つ存在として、日本代表のセンターバックとして継続的にチャンスを与えられる可能性もあるだろう。
畠中自身も初めて日本代表合宿に参加し、日常的にトップレベルの選手たちと渡り合う海外組の選手たちと触れ合う中で「やっぱりJリーグとは違うところでプレーしているという意味では、リーグのレベル自体も海外の方が高いですし、学ぶことが多かったので、正直自分もチャレンジしたいなという気持ちが強くなりました」と大きな刺激を受けた様子。
実際に国際Aマッチに出場して海外の選手とマッチアップし、より大きなモチベーションを胸に抱いてマリノスに戻れるだろう。「自分もどこまでできるのか楽しみ」とワクワクを募らせていた日本代表の舞台を経験して、これからどんな成長を遂げるだろうか。
そして吉田や冨安、三浦、槙野、昌子、植田、さらに東京五輪世代の若手の突き上げもある中で日本代表に生き残れるかは、今回のボリビア戦で得た成果を日々の取り組みにどんな形で反映させていけるかにかかっている。
(取材・文:舩木渉)
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