代表デビュー戦で見つかった伸びしろ
その後、乾が交代でベンチに退いてしまったため、何本も同じような場面を作ることはできなかったが、クラブと違い短期間で連係を構築しなければならない代表でも、しっかりとピッチの上でお互いのプレーを分かり合うことができれば、畠中からの“飛び道具”がチームの武器になりうる大きな可能性を示すパスだった。
一方で、より高いレベルの選手として日本代表の最終ラインでポジションを掴むために、森保監督が言うように「まだまだレベルアップすべきところ」があるのは間違いない。例えば畠中で言えば、サイドバックを効果的に使うパスの選択肢や、サイドチェンジのための長いパスの判断には向上の余地がある。
ボリビア戦で左サイドバックでA代表初先発を飾った安西幸輝は、本来攻撃に持ち味のある選手で、積極的にゴール前まで進出していく。畠中から安西へは、足もとのパスが多く、オーバーラップや果敢な攻め上がりを加速させるようなパスはほとんどなかった。
安西が自重していたのか、乾に身振り手振りを交えながら「もっと外側を抜けていけ」と指示され、畠中も「安西を走らせて使え」と言われているような場面も何度か見られた。足もとだけでなく、乾のサイドのスペースを空ける動きに呼応して安西が走り、その裏のスペースに畠中から一気に鋭いパスが配給される流れを作っていければ、より効果的なチャンスメイクにつなげられていたかもしれない。
そしてサイドチェンジは、ボリビア戦で1つのテーマになるかと思われていた。というのも韓国はボリビアに対し、低い位置で短いパスをつなぎながらプレッシャーを引きつけて、一気にサイドチェンジで人の少ない逆サイドに展開、そこから決定機を量産していた。
ボリビアのエドゥアルド・ビジェガス監督も「韓国戦ではサイドチェンジに度々驚かされたことがあった。逆サイドをきちんとマークできていなかった」と認めていた。「今日はそこを気をつけるようにして、日本のサイドチェンジは何度かあったが、非常に突破力のある乾を特にマークするようにしていた。彼は非常にレベルの高い選手で、何度も突破を試みていたが、彼を中心に日本の攻撃をしっかり警戒していこうと話していた」と明かした。
その乾へのサイドチェンジは、日本も1つの狙いにしていたように見えた。回数こそ韓国ほど多くなかったものの、特に前半は小林祐希や香川真司が右から左へのロングパスを駆使し、そこから決定機までのイメージを描けていたようだった。