バイタルエリアの攻防を制して
ゴール前での細かな動き出しやシュートの感覚は2トップの一角を任されることの多いシント=トロイデンVVで磨いてきたところ。「少し外してやったりとか、あとは足もとで強いパスもらってそのまま良いトラップで入れ替われるようにしていければ。めちゃくちゃスペースがあるわけじゃないし、足がめちゃくちゃ速いわけじゃないので、そういう動きの方が僕的には合っていると思う。(パスを)出せる選手もいっぱいいますし、引き出しが良ければチャンスができる」と、自らの得意とするマークを翻弄する駆け引きでゴールに迫っていく心算だ。
センターバックとして先発濃厚な畠中槙之輔のように、相手の意表を突く縦パスを通せる能力を持った選手もいる。本人も「狙えれば狙いたい」と意欲十分で、最終ラインから一気に2列目の香川や乾、宇佐美、さらにその前にいて相手DFと駆け引きする鎌田に直線的に地を這う縦パスが通れば、それだけで一気にチャンスが生まれる可能性もある。
ボリビアの守備の要・フシーノは「南米の国との戦いとは全く異なるものになる」と述べ、22日に敗れた韓国とこれから対戦する日本の印象について「技術の高さ」「スピード」を共通項に挙げていた。そして日本は「ほとんどの選手がトップレベルでプレーしている。難しい試合になるだろう」と警戒している。
今年2月から代表チームを率いているビジェガス監督は、国内リーグで6度の優勝経験を持つボリビア屈指の名将。彼の経歴について尋ねると、関係者の口からはスラスラと国内の名門クラブの名前が出てきて、取材に訪れていた現地メディアの記者によれば「ボリビアサッカー史上最高の監督」とのことだった。
そのビジェガス監督の弟オスカルはA代表のアシスタントコーチとして兄を支えるだけでなく、世代別代表の監督も兼任しているという。オスカル・ビジェガスはボリビア国内でも有名なユース年代の指導者で、U-20世代を積極的に登用する新生A代表の強力なサポート役にもなっているそうだ。
平均年齢24歳と若く吸収力の高いチームに、ビジェガス監督は韓国戦で出た課題解決のために何を落とし込んでくるか。そして、日本代表は彼らの勢いを上回り、武器としている前線の細かい連係・連動でゴールを奪えるだろうか。バイタルエリアの攻防が勝敗を分けるキーポイントとなりそうだ。
(取材・文:舩木渉)
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