サッカーを楽しむということ
さらに、中島は「外国人助っ人」としてカタールに渡っている。同国も含めた中東にはこれまでも多くの外国人選手が参戦したが、例えばシャビやガビ、ヴェスレイ・スナイデルのように世界トップクラスの選手がベテランになってからカタール移籍を選んでいる。他にも外国人選手として請われて移籍するのは、欧州トップリーグでもレギュラークラスでプレーできる質の選手たちが多い。
つまり「外国人助っ人」として求められるプレーのレベルは、国内組の選手よりもはるかに高く、欧州の一線級と同等のものが最低限の要求としてあると見ていい。観客が少なかったり、リーグ内でのレベル差があったり競争力の面で多少の不安はあれど、欧州と遜色ないハイレベルなプレーが常に要求され、欧州の頂点を知る指導者からサッカーを学べて生活にも困らない環境は、サッカー選手としてある意味理想的と言える。
中島は自分の決断が間違いではなかったことを実感し、改めてこう強調する。
「お金のことは僕はそこまで気にしていないですし、ただアル・ドゥハイルが欲しがってくれたというのがすごく嬉しい。自分にとって一番魅力的なクラブだったから行かせてもらいました。生活面も最高です。すごく住みやすいですし、家族も来てくれているので、奥さんと2人で本当に幸せに暮らせていますし、それが一番大事ですね。それがサッカーにもつながってきますし。
(移籍したのは)一番は楽しそうだからですね。はい(笑)。他が楽しそうではなかったわけじゃないです。本当にいろいろなクラブが話をくれましたけど、(アル・ドゥハイルが)すごく自分に合っていると思いましたし、実際に決まるまで(カタールに)2回まで行っているんですけど、サッカーの面もサッカー以外の面も自分にとってすごく魅力的だったので、楽しくサッカーできるし、より楽しくサッカーやるために成長できると思ったので、移籍しました」
中島の思考の根底には常に「サッカーを楽しむ」という絶対にブレることのない軸がある。そういう意味で彼はカタールへ移籍しても何も変わっていない。「ドリブルもシュートもパスも、サッカーの要素は色々あると思うんですけど、それを全て楽しみたいと思いますし、ボールを持っている時も持っていない時も、より上手くなればなるほど楽しいものになっていくと思うので、サッカーそのもの、サッカーすることを楽しみたいです」と。
だが、プレーには確実に変化、そして成長が見られる。必ずしも欧州でなければ選手として高いレベルを目指せないのかと問われたら、中島は「そうは思わない」と答えるだろう。外野がネガティブな要素ばかり並べて憂慮していたアル・ドゥハイルでの挑戦は、彼にとってポジティブなものでしかない。今ピッチ上で表現されている中島の進化と新しいキャリアのあり方は、日本代表の明るい未来につながっていくはずだ。
(取材・文:舩木渉)
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