アル・ドゥハイルの攻撃の柱として
いったい彼の中にどんな変化が起きているのだろうか。表面的なプレーを分析するだけでは感覚派の24歳の頭の中を理解するのは難しいかもしれないが、確かにアル・ドゥハイルで背番号10を任され、攻撃の全権を握る中で見えてきたものはあるはずだ。
最近のカタールでの中島は、3-4-2-1の2シャドーの一角に入ることが多い。攻撃時はフリーロールとして様々な場所に顔を出し、これまでのように左ウィングの位置からドリブルでカットインする十八番の形を見せることもあれば、中央でパスによるチャンスメイクを試みる場面も見られる。
特に中央でのプレーは絶品だ。ボールを持てば相手のディフェンスが1人ないし2人寄せてくるが、それを軽業師のようにかわして前進したり、十分に引きつけて両ワイドに走ったフリーの味方へサイドチェンジのロングパスを通したり、「どうしてそこが見えているんだ!?」と驚くような視野の広さと判断速度でフィニッシュを演出する。
思えばFC東京時代、今よりもドリブラーとしてのイメージが強かったあの頃は、ボールを持つとなぜか相手選手が多くいるエリアに自分から突っ込んでいってしまうような印象が強かった。それがポルティモネンセで判断スピードの向上とともに、本来持っていた視野の広さを生かしてドリブル、パス、シュートと自分の強みでもある選択肢を効果的に生かせるようになっていった。
そして最近は攻撃陣にアジア屈指のタレントを揃えるアル・ドゥハイルで絶対的な柱として信頼を寄せられ、ゴールもアシストもできる万能アタッカーに成長している。「元からシュートは遠目でも打つというのは、10代の頃からやってきました。やっぱり決めなければいけないですけど、シュートを打たないと入らない部分もあるので、それはどんどんチャレンジしていけたらいいと思いますし、味方がいい動きをしたらパスを出すということも、もちろん考えているので両方やっていきたい。両方の精度を高めていきたいなと思います」と、純粋にサッカーが上手くなることを目指して日々を過ごせている。
守備面での成長も目を見張るものがある。ポルティモネンセ時代は攻撃から守備に切り替わる局面でも、左サイドに攻め残って、次の攻撃で起点になるための役割を任されていたが、アル・ドゥハイルではチーム全体の守備組織の中でしっかりと与えられた仕事をこなさなければならない。