プラチナ世代のリーダーシップ
今、日本代表入りしていない選手にもキャリアが順風満帆だった者は少ない。宮市は高卒でアーセナルに加入したものの、近年は膝に大きな怪我が続いて最近ようやく復活の兆しが見えてきたところ。高木や小野もそれぞれ若くしてオランダやベルギーに移籍したが、そこからステップアップはできなかった。
こうやって数え切れないほどたくさんの悔しい思いをして、想像を絶する苦難を乗り越えてきた世代だからこそ、日本サッカーの次の時代を引っ張っていく自覚や責任を、真正面から受け止めて、皆ピッチ内外で表現しようともがいている。昌子は言った。
「実際こうやってキャプテンの青山(敏弘)選手や(吉田)麻也くんがいないですけど、じゃあキャプテンマークを巻く人がキャプテンをやらなきゃいけないかというとそうじゃないし、みんながそういう気持ちを持つことがすごく大切だと思います」
アジアカップ決勝でカタールに敗れた後、吉田麻也はチームキャプテンとしての力不足を悔いていた。「(準決勝の)イラン戦ですごくいいパフォーマンスを出して、この試合に臨んで、この流れでいけるだろうという油断や隙みたいなものを僕自身がチームの中で少し感じていたにも関わらず、それを律することができなくて、勝ちに導くことができなかったという自分の不甲斐なさをすごく感じています」と。だが、日本トップクラスの個性が23人、毎回競争の末にメンバーを入れ替えながら集合して試合をするのが代表チーム。故に「キャプテン」という役職の人間が1人で全体をまとめ上げるのは難しいし、リーダーシップを発揮する人間が複数いれば組織としてのまとまりを作りやすくなるし、それぞれにチームに対する自覚や責任も生まれやすい。
吉田の思いを知ってか知らずか、柴崎もチームリーダーの1人として自立していく覚悟が、アジアカップを経て一層深まった様子だった。
「頼れる選手が今回いないというと変になりますけど、もちろん彼らがいてもいなくてもやらなければいけない部分はこれから先、立場的にもそうですし、もっと個人的に成長しなければいけない部分だとは思います。誰と組むとか、どんな選手が試合に一緒に出ても、それくらいのパーソナリティを持ってやっていなかなければいけないと思っています」
森保ジャパンが発足してから約半年が経ち、その間に堂安律や冨安健洋、南野拓実、中島翔哉といった若い選手たちが台頭し、日本代表の新たな中心として躍動している。彼らにやや押され気味な「プラチナ世代」は、ここで意地を見せ、次世代の先頭に立つリーダーとしての存在感を示すことができるか。22日のコロンビア戦と26日のボリビア戦は、アジアカップ後のチーム作りにおいて大きなターニングポイントになるかもしれない。
(取材・文:舩木渉)
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