ハメスにも「何も感じない」
若い選手というのは好不調の波がつきものだが、その波を極力小さくしなければ、日本代表でレギュラーを維持し続けることはできない。その厳しさを再認識したうえで、堂安はゼロからの挑戦者として3月シリーズに向かうしかない。
「自分がオランダに行って感じたのは、ドリブルが人より長けているわけでもないし、パスが世界一級品になれるかっていったらそうじゃないと。やっぱりシュートのパンチ力や一発の振りっていうのは、トレーニングの時から自分の特長だし、負けていないと感じています」と改めて強調したように、自身最大の強みは強く鋭いシュートをゴールに突き刺せること。
その武器を前面に押し出すことでしか、宇佐美や乾といった年長者を完全に凌駕することはできないだろう。なりふり構わずに自分を突き詰めていける若さの特権を最大限生かして、アジアカップ後の足踏み状態から抜け出したいところだ。
この20歳の若武者の頼もしいところは、世界的スターに対しても全く物怖じしない点。2014年のブラジルワールドカップで日本を奈落の底に突き落としたコロンビアのエース、ハメス・ロドリゲスにも「特に何も感じないですね」。あっけらかんと言い切った。
2人は同じレフティだが、グイグイとゴールへ突き進む堂安は技巧派タイプのハメス・ロドリゲスとは異なる長所を持つ。切れ味鋭い得点感覚を遺憾なく発揮して、相手の度肝を抜くようなインパクトを残せば、1月の移籍期間に叶わなかった欧州ビッグクラブへのステップアップも現実味を帯びてくる。
この一戦は日本代表にとっては因縁マッチだが、堂安律にとっては世界トップへの扉をこじ開ける千載一遇のチャンス。その自覚を持って、全ての力を出し切ることに集中してもらいたい。
(取材・文:元川悦子)
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