後半戦急失速の要因
当時、前半戦だけですでに10得点を挙げていた22歳のテクニシャンは、結果を残したことで自らのプレーに自信を取り戻していた。ゴール前でのプレーにも変化と手応えを得ていた。
「今はゴールの近くでプレーできています。あまり引きすぎず前線に張っていたり、ディフェンスラインと駆け引きしたりして動き出せるようになりました。ボールを持った時も、パス優先というよりは自分でシュートを打つのを最優先に選択しているので、そこは変わったと思います。ペナルティエリア内なら、1人くらいは剥がしてゴールを奪える」
とはいえ「ベルギー」と「4大リーグ」の差を実感していたのも事実だ。
「例えばドルトムントの香川真司選手のように今はうまくいっていなくても、僕が入るよりは彼が代表に入るべきだと思います。仮に試合に出られなかったとしても、彼は競争が本当に激しい場所でプレーしていて、僕が彼よりも下のレベルのリーグで活躍したところで張り合える位置にはいないと思うんです」
彼はベルギーに渡る前の1シーズン、フランクフルトでキャリア最大とも言える挫折を味わった。欧州最高峰の舞台に立つにはまだまだ足りないことだらけで、「僕はまだそういう選手たちと比べられる土俵にいない」。だからこそ「できるだけ早く4大リーグに戻る」ことを基準に掲げ、シント=トロイデンVVでの挑戦を選び、貪欲に結果を追い求めた。
ところが後半戦はゴールがめっきり減ってしまった。これにはシント=トロイデンVVの冬の移籍市場での動きが影響している。地方の小クラブとしての宿命と言うべきか。1月になってから左サイド全体を献身的に支えていたベルギーU-21代表MFカスパー・デ・ノーレがゲンクに、攻撃面で全権を握っていたウクライナ代表FWロマン・ベズスがヘントに、いずれも上位クラブに引き抜かれてしまった。
特に大黒柱だった10番のベズスが抜けた穴は大きく、アジアカップで負った怪我の影響で遠藤航が長期離脱を強いられるトラブルも重なって中盤の構成力は大きく低下。その結果、鎌田は2トップの一角から中盤に降りてボールを引き出す役目も担わねばならず、ゴール前で決定的なラストパスを受けられる回数も減ってしまった。
レギュラーシーズン第7節から第30節まで全24試合に出場した鎌田だが、第18節までの12試合で10得点、その後の第19節から第30節までの12試合ではわずか2得点しか挙げられていない。昨年12月の時点で「最低限あと5点。最初から(レギュラーシーズンで)15得点を目標にしている」と語っていた本人からすれば、不満の残る結果だったに違いない。