納得できなかったからこそ、何度も見直す
このときの心境を、久保は問われている。永井からのパスを待っているようだった、と。
「ああいうときに、いつも自分は(シュートを)選択しているので。やっぱりボールをもっている選手が(次のプレーを)選択して、自分は(永井選手が)シュートを狙った瞬間に次へ切り替えていったので、そこまではよかったかなと思います」
状況が瞬時に移り変わるサッカーにおいて、目の前の光景に一喜一憂している時間はない。永井がシュートを打つならば、自分は何をすべきか。答えは単純明快。キーパーに防がれる状況を想定して、誰よりも早くこぼれ球に反応すればいい。果たして、久保が思い描いた通りの展開が生まれる。
身長193cm体重84kgの巨体を思い切り伸ばし、ダイブしたランゲラックの左手が、ゴールの右を狙った永井のシュートを食い止める。もちろんキャッチなどできない。そして、すでにゴール前に詰めていた久保は、ひと呼吸遅れて反応した丸山に大きな差をつけていた。
しかし、オーストラリア代表歴をもつランゲラックも、すぐに起き上がって体勢を整える。無人と化したゴールを守るべく、低く構えながら左足を思い切り伸ばして、久保のシュートコースを狭める。相手キーパーが見せた執念にも映る一連の動作が、久保の感覚を微妙に狂わせた。
「キーパーが出てきているのも見えていました。それでも落ち着いて(ゴールへ)流し込めるかな、と思っていたら意外と角度がなくて、サイドネットに行ってしまいました」
利き足とは逆の右足から放たれたシュートは、ランゲラックが必死に伸ばした左足の先をかすめていった。しかし、行き着いた先は右ポストのわずかに右側。サイドネットを外側から揺らした一撃に納得できなかったからこそ、試合後のロッカールームで何度も見直したのだろう。
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