指揮官の予言が的中
「今季はいい選手であることを証明したシーズン。来年はかなり重要な選手になるだろう」
昨季のJ1最終節を前に、アンジェ・ポステコグルー監督が口にした“予言”は想像以上に早く現実のものとなった。「重要な選手」というのは、横浜F・マリノスのDF畠中槙之輔のことだ。今季開幕からレギュラーに定着すると、今月22日のコロンビア戦と同26日のボリビア戦に向けた日本代表メンバーに初選出された。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
畠中っていったい誰? そんな疑問が浮かぶ読者も多いだろう。東京ヴェルディジュニアからジュニアユース、ユースと育ち、2014年にトップチームへ昇格。U-18とU-19での年代別代表選出経験はあるものの、メジャーな国際大会に出場したことはない。その後、プロ2年目まではなかなか出場機会に恵まれず。2016年に町田ゼルビアへのレンタル移籍を経験し、ヴェルディに復帰した2017年からJ2で主力に定着した。
そして2018年夏に、横浜F・マリノスへと移籍して人生初のJ1の舞台へとステップアップを遂げる。やはりJ1の壁は厚く、移籍後のリーグ戦では5試合しかピッチに立てなかった。それでも急成長しているのは明らかで、飛躍へのきっかけをつかんだように見えた。
シーズン終了後、畠中はJ1での初めての半年間を振り返ってこう語っている。
「自分としてはチャレンジの半年間だったかなって、思いますね。J2だと感じられなかったスピードだとか技術を体で感じることができたので、すごく楽しかったですし、すごく上手な選手と練習からプレーできて、試合でもやったことのない選手と対戦できてすごく充実していました。自分のこれからのことを考えると、(移籍して)本当に良かったのかなと思います」
彼自身「足りない部分もあった」とはいうものの、「通用する部分があった」という自信の方が大きかった。確かに守備で時折細かい“ポカ”が見られた一方、ポゼッションに関わる能力、主に攻撃のビルドアップ時に発揮するパス能力は昨季の時点ですでにJ1でも屈指のレベルにあった。
そして迎えた今季、マリノス1年目で見つけた課題に取り組みつつアピールを続けた結果、開幕前の練習グラウンドには常にレギュラー組で紅白戦に挑む畠中の姿があった。多少の驚きもあったが、プレーを見れば当然のことに思えてきて、開幕後には彼の能力の高さへの確信と信頼に変わった。