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“日本サッカーの当たり前”とは? 「自分たちのサッカー」に“相手”が存在するために【岩政大樹・相手を見るサッカー(後編)】

元日本代表が自ら筆をとり、「相手を見てサッカーをする」を徹底的に言語化! 岩政先生の愛称で親しまれる元日本代表の頭脳派・岩政大樹が、具体的な方法論を提示しながら、サッカーの本質に鋭く迫った3/18発売の最新刊『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』から、発売に先駆けて序章を前後編で公開する。今回は後編。(文:岩政大樹)

シリーズ:岩政大樹・相手を見るサッカー text by 岩政大樹 photo by Editorial Staff

粘り強く植えつけた概念

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岩政大樹氏【写真:編集部】

☆前編はこちら☆

 例えば、サッカーにおいて“正しい判断”とは相手から決まります。判断は基本的に相手を見て決められていくものなのです。だから、私はよく「(判断の)答えは相手が教えてくれる」と伝えていました。

 しかし、彼らはそれよりも「こういう場合はチームとしてこうしよう」とあらかじめ自分たちの“正しい判断”を決めて、それをみんなで一生懸命にやる。それが「自分たちのサッカー」だと思っているようでした。

 しかし、相手がいるサッカーにおいて、それでは不十分です。試合ではいろいろなことが起こり、想定と異なることなどいくらでも出てきます。相手だって毎回変わるのです。

 その中で、いつも「自分たちのサッカー」をするためには「自分たちのサッカー」に相手を含めておかなければなりません。

「おれたちはスペースに蹴って走ろう」ではなく「“相手”が出てきたら裏へ流しこもう」とか「“相手”が出てこなくても一度裏へ流し込んで試合の流れを掴もう」でなくてはなりません。

「このエリアを攻めよう」ではなく「“相手”がこう動いたらここが空くからこのエリアを攻めよう」でなくてはなりません。

 それが「自分たちのサッカー」でなければ、あらゆる相手に通用する「自分たちのサッカー」にはなり得ず、“良い時はいいけどダメな時はダメ”になってしまいます。

 だから、私は指導者として「相手を見てサッカーをする」という概念を植え付けることからスタートしました。それを練習の中で具体的に説明しながら、粘り強く、彼らの“自分たちのサッカー”の考え方を変えていこうとしたのです。

 それを彼らは皆「面白かった」「知的だった」と表現してくれました。つまり、これまでに考えてきたサッカーと違っていたのだと思います。だとすれば、私の考えていたことはあながち間違いではなかったのでしょう。

「マリーシア」とは「相手を見てサッカーをする」ということ

 私には、サッカーは“相手”とするものだという考え方が当たり前にありますが、果たして“日本サッカーの当たり前”はどうでしょうか。

 本書では、サッカーにおける「相手を見てサッカーをする」という部分を深く考察してみます。私にとって「自分たちのサッカー」には常に相手がいました。「取るべきポジション」には相手がいました。

「自分たちのサッカー」とはきっと、試合におけるできるだけ多くの“相手”に対応できる自分たちのセオリーのようなもので、それは確かに“自分たちがやるべきこと”です。

 ここで大事なことは、「自分たちのサッカー」を構築する判断基準の中に「相手」が存在していることを意識しておくことだと思います。つまり、“相手を見てサッカーをする”ことがどういうことなのかを知り、“相手を見てサッカーをする”ことを「自分たちのサッカー」に含んでおくということです。

 そうすれば、相手がいるサッカーというスポーツにおいて、相手が存在しなくなることなどないはずです。

 日本人は元々「マリーシア」とか「駆け引き」という言葉に抵抗があります。「ズル賢い」という拡大解釈がそうさせたのでしょう。もったいないと思います。

 私はサッカーにおける「マリーシア」は「相手を見てサッカーをする」ということだと理解しています。「サッカーがうまい」というのも、もしかすると同義かもしれません。

「相手を見てサッカーをする」ことがどういうことなのか。これを噛み砕いて説明できれば、それを実行する力は日本人にもあると思います。日本人は示されたものをすることは得意なのですから。

 だからきっと「相手を見てサッカーをする」を噛み砕くことは日本サッカーのためになる。そう信じ、この難題に挑んでみます。

(文:岩政大樹)

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『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』

定価:本体1600円+税

元日本代表が自ら筆をとり、「相手を見てサッカーをする」を徹底的に言語化!
日本サッカーがいま最も向き合うべきテーマである
「相手を見てサッカーをする」の言語化に挑んだ著者渾身の書き下ろし。

「自分たちのサッカー」に「相手」を含めない風潮のある日本サッカー界が次のステージに進むためには、
「相手を見てサッカーをする」ことを常識にしなければならない――。
岩政先生の愛称で親しまれる元日本代表の頭脳派は、具体的な方法論を提示しながら、サッカーの本質に鋭く迫ります。
いわば本書は「自分たちのサッカー」深化論であり、すべてのサッカーファン・指導者必読の一冊です。

詳細はこちらから

【了】

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