サッカー界での女性進出のパイオニアに
ポジティブな輪も広がっている。来日から2日後に行われた就任会見では通訳が間に合わず、鈴鹿市内で長く働き、日本語も堪能なペルー人男性が臨時通訳を務めた。いまでは報道を見てクラブに連絡を入れてきた、スペインでプレーした経験をもつ小澤哲也氏が通訳兼アシスタントコーチを務める。
さらにもう一人、横浜マリノスを皮切りに延べ11チームでプレーし、奈良クラブに所属した2017シーズンをもって引退した岡山一成氏が、マルティネス監督を招聘した鈴鹿の英断に共鳴。3月に入ってコーチ兼フィジカルコーチに就任し、指揮官を支えている。
「プレーヤーとしては男性の方が上だと思いますけど、指導者という土俵の上では男性も女性も変わらないと私たちも第一に考えています。確かにサッカーの男子チームでは非常に珍しいですけど、社会では女性の会社経営者は大勢いますし、行政を見わたしても女性首長は珍しくありません」
こう語る吉田常務取締役にとっても、当初はJFLだけでなく日本サッカー界のなかで、耳目を集めるために新機軸を打ち出した。しかし、スペインから見て極東に位置する日本へ一人でやってきて、チームを変えようと情熱的に指導するマルティネス監督の姿を介して、新たな意義を見出している。
「いまはどの企業でもダイバーシティーが謳われ、人材活用において多様性が求められているなかで、日本サッカー界で女性が男子チームを率いるトライはほとんどない。そのなかで私たちが事例として成功させることで、サッカー界で女性が進出していく道をどんどん切り開いていければ」
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