まずは検索エンジンで「サッカー 女性 監督」
「以前から海外で指揮を執りたい希望が自分のなかにあり、タイミングよく鈴鹿アンリミテッドからお話をいただきました。男子チームが女性監督を探している、と聞いたときにはもちろん驚きました。ただ、育成年代の子どもたちを指導していたときにも感じましたけど、男の子に対しても女の子に対しても、サッカーを教えること自体は変わらない。大人の男性に対しても、フィジカルや体力の部分を除けば、違いを感じることはほとんどないと思ったんです」
オファーを快諾した理由を、マルティネス監督はこう語る。メールでは全国規模のリーグでは日本サッカー界で前例がない、女性監督を招聘するに至った事情も説明された。話題性が優先されたオファーだったが、難色を示すことはなかった。すべてを受け入れて、スペインを離れることを決めた。
2010シーズンから東海社会人リーグ1部で戦ってきた鈴鹿は、昨シーズンに連覇を達成。気合いも新たに臨んだ全国地域サッカーチャンピオンズリーグで、5度目の挑戦にしてJFLへの昇格基準となる2位以内を確保。優勝した松江シティFCとともに、悲願を成就させた。
しかし、直後に辛島啓珠監督(現マイナビベガルタ仙台レディース監督)が勇退。後任人事に着手するなかで、クラブとして大きな決断を下したと吉田常務取締役が振り返る。
「JFLの一番下、J1のトップから数えれば71番目の位置づけとなる私たちが、将来のJ1へ向かってどのように戦っていけばいいのか。サッカーではひとつずつ勝たなければいけないなかで、経営では目新しいことをやらなければすぐに埋もれてしまう。ならば、前例のないところで挑戦しよう、と」
監督の適格に関しては、規約で男女うんぬんが謳われていないことを確認したものの、あても何もない。まずは検索エンジンで「サッカー 女性 監督」とキーワードを打ち込んだ。監督に必要な公認S級コーチライセンスを取得している日本人女性は、わずか6人しかヒットしなかった。しかも、なでしこジャパンの高倉麻子監督を筆頭に、全員が指導に就いていた。