残り時間わずか、明らかな変化
攻めども攻めどもゴールが遠い。ホーム開幕戦でFC東京は鳥栖の堅守に手を焼き続けた。後半16分にはMF高橋秀人を退場で失い、10人になってからもアウェイチームの抵抗は弱まらない。最前線の元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスまでもが体を張り、頻繁に自陣に戻って守備をする。そこには何が何でも今季初勝ち点をもぎ取るという、チーム全体の強烈な意思が感じられた。
時間を追うごとにスコアレスドローの雰囲気が色濃くなっていく味の素スタジアム。だが、残り時間が1けたに入るころから、明らかに何かが変化した。徐々に鳥栖のマークがずれ始める。きっちり閉められていたはずの中央で起点ができ、勢いに乗った波状攻撃をFC東京が仕掛けた。
そのリズムを作り出したのがMF久保建英だった。右サイドからトップ下にポジションを移すと、その圧倒的な技術を活かし狭いエリアでボールを受け、卓越した戦術眼とひらめきでゴールに襲い掛かる。終了間際に、何かが起きる可能性が爆発的に高まっていった。
そして後半43分、その時は訪れた。右サイドで相手のクリアを拾った東京は、ゴール前にクロスを上げる。こぼれて左に流れた球に反応したDF小川諒也は、そのままダイレクトに左足を振りぬいた。ボールはカバーに入った鳥栖DFに当たりゴールに吸い込まれていった。
待望のホーム初白星を引き寄せたのは、まさかの相手オウンゴール。だが長谷川健太監督は次のような言葉で、その理由を説明した。
「(10人になった)鳥栖の4-3-2の守備ブロックに有効打を打てなかったので、建英をトップ下のような形にして、最後の10分くらいで少し形を変えた。そうしたら建英が相手の嫌がるとこでボールを受け、2トップの下で自由に動けるようになり、だいぶ変化が出てきて少し相手を崩してクロスが入る形になった。その辺から相手のオウンゴールを生むことができたのかなとは思っています」。
偶然の産物ではなく、17歳の若武者の働きがあり、最後はチームで奪い取った得点だったのだ。