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Jリーグ 6年前

マリノスが手にした「踏ん張れる強さ」。ラストプレーの劇的同点弾を生んだ団結力の秘訣

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「出ていない選手がどれだけチームを思っているか」(大津)

 昨季との違いをもう1つ挙げるとすれば、失点後の振る舞いだろう。アンジェ・ポステコグルー監督の1年目だった2018年は、先制した試合で失った勝ち点がリーグワーストだった。先にゴールを奪った試合で10勝2分7敗、実に25ポイントも取りこぼしていた計算になる。

 この不名誉な記録に象徴されるように、とにかく失点した後のチーム全体の落ち込みが結果にまで影響を及ぼしていた。先制するかしないかに限らず、1点取られると、そこから立て直せないまま簡単に2点目も失ってしまうという悪循環に陥った試合は数多く見た。

 ところが今年のフロンターレ戦で、マリノスは昨季と見違えるような力強さを発揮した。4分に先制されても臆することなく前年度王者に向かっていき、主導権を握る時間帯も長くあった。24分のマルコス・ジュニオールの同点ゴールまでの流れは昨年から積み上げてきたコンビネーションと戦術の賜物。しかし、終盤まで1-1で引き分けムードが漂っていた中で、88分にフロンターレに勝ち越されてしまう。

 またダメか……。そんな思いも頭をよぎったが、ピッチ上の選手たちは一切諦めていなかった。「誰も下を向いていなかったし、ピッチの上でまだまだいけると声を掛け合っていた」と扇原は語る。途中出場だったキャプテンは、「本当にみんなの下を向かなかった姿勢が同点ゴールにつながった」と自らのヘディングシュートで勝ち点1を手繰り寄せた。

 後半のアディショナルタイムの目安である4分が過ぎようとしても、一切気を緩めることなく攻め続けた末に獲得したコーナーキックだった。ギリギリの状態でも冷静さを保ち、左サイド深くまで入り込んだ天野は「出すところがなかったので、とりあえず当てとこうと思って当てました」と、狙い通りにコーナーキックを獲得。

 そして「一番チャンスになるのはあそこのエリアだと思っていて、スカウティングでも言われていたので、そこにとりあえず流し込みました」と、フロンターレの弱点にドンピシャのボールを蹴り込んだのである。

 三好に代わって先発し、今季リーグ戦初出場となった大津祐樹も「昨年と違って勝負強さも兼ね備えてきているのかなと。ただやりたいだけのサッカーをやるのではなくて、本当にいまいいチームになっているなという実感はあります」と現状への手応えを実感している。

「最後のプレー、ああいういうところで決め切れるか、決め切れないかは昨年との大きな違いだと思う。タカ(扇原)にしろ、(試合に)出ていない選手がどれだけチームを思っているかという気持ちが乗ったゴール。その分チームとして勝ちたいんだという気持ちが、1人ひとりいま練習からやっている中で、出ている選手にしろ、出ていない選手にしろ、本当に同じような力でいると思うので、誰が出ても変わりないというか、そういったすごく面白いチーム編成になっていると思っています」

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