“水に合った魚”
「あれ(インナーラップ)を続けて、昨年からチャンスは作れていた。いいものは継続して、精度も上がっている」(仲川)
シティ・フットボール・グループの傘下にある横浜FMの戦術は、マンチェスター・シティとよく似ている。インナーラップはシティの十八番でもある。
やりたいサッカーが決まっている。モデルもある。ただ、すぐにシティになれるわけではなく、昨年は得点が多かったが失点も多かった。シティの真似をすることに疑問を持つ声もあった。しかし、今年はパワーアップしている。
名古屋グランパスやヴィッセル神戸などもそうだが、やりたいサッカーが決まっていて継続しているチームは補強効果が出やすい。最初は用意された服と体のサイズが合っていない。普通は体に服を合わせるものだが、これらのクラブは服に体を合わせていく。つまり選手を入れ替えていく。どのポジションにどんな選手が必要かはわかっているので、補強対象は明確だ。
横浜FMは昨年活躍して日本代表にも選ばれた山中亮輔が浦和レッズに移籍しているが、高野遼が違和感なく左サイドバックの穴を埋め、右も新加入の広瀬陸斗が2試合続けての先発。FWは仲川以外の2人が入れ替わり(エジガル・ジュニオとマルコス・ジュニオール)、MFは川崎フロンターレから期限付き移籍の三好が活躍している。人はかなり代わっているのにプレースタイルは継続。というよりも、スタイルを継続進化させるための補強になっているわけだ。
2014年に右ヒザに重傷を負い、翌年に横浜FMに加入した仲川は、その後にFC町田ゼルビア、アビスパ福岡へ貸し出されてから戻ってきた。昨年途中でレギュラーポジションをつかんでからは水を得た魚のごとしだ。昨年の山中、今年の三好もそうだが、水に合っているのでチームにフィットするのが早い。今のところ魚たちは気持ちよさそうに泳ぎ回っている。
(取材・文:西部謙司)
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