本田封じ。西の投入で何が変わったのか?
西はピッチに入ると味方に声をかけ、ポジショニングを調整する。プレー中も何度も指示を出していた。その結果、大邸の選手は空いているスペースに動き出し、パスが回るようになる。メルボルンは西が入ったことによる変化に対応できず、後手に回った。
また、守備面でも大きく改善された。特に本田への対応だ。「メルボルンの中で注意するのは本田選手。自由にやらせないようにとは言われていた。ポジション的にマッチアップするので、ミドルを打たれたりなどしないような警戒していました」と西は語る。
本田は以前のようなトップ下ではなくメルボルンではボランチでプレーしている。だが、試合後にMFテリー・アントニスが「彼(本田)が復帰してチームのバランスは良くなった。攻撃がうまくいくようになった」と語るなど、ポジションを下げても攻撃の中心となっている。
そこを止めたのは大きかった。後半、本田がボールを持っても出しどころがない場面が目立った。大邸がパスコースをふさぐようになったのだ。西は守備時でも味方に指示を出し、直接本田と競り合う場面もあった。本田を封じられたメルボルンは攻撃がちぐはぐになり、選手を交代しても何も改善されなかった。
この試合、西はゴールを決めるなど目立った活躍をしたわけではない。だが、大邸が逆転できた要因は間違いなく西の投入であり、影のMVPと言っていい。
「アジアに来てACLでプレーできることは本当に嬉しい。楽しみたい。まだ1勝。ただ、アウェイの初戦で勝てたのは良かった。ACLとKリーグと、ハードなスケジュールですけど頑張っていきます」
西はそう語ってスタジアムを後にした。献身的にプレーする西は本田のような知名度はない。だがこの試合で、少なくともACLのライバルクラブでは要警戒選手として著名になったはずだ。西翼はアジアで大きな一歩を踏み出した。
(取材・文:植田路生【メルボルン】)
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