「感動的な」2得点。大ブレイクの予感も
そして何より、エジガルはDFの背後を取るのが抜群にうまい。G大阪戦ではボールを受けた仲川に相手DFたちの視線が集まった瞬間に、瞬時の判断でディフェンスラインの裏に飛び出した。仙台戦のゴールは先に述べた通り。
ブラジル時代のゴールを見ても、相手DFが押し上げようとすることによってできたギャップにすっと入り込んだり、相手の視線が逸れた一瞬の隙で背後に回ったり、味方のフリーランに反応してマーカーの視界の外に動き出したり、多彩なパターンがあった。単純な駆け引きのみならず、周りの選手のエネルギーを活用して自分の力に変換する能力も持ち合わせている。
エジガルは早くも攻守にわたって欠かせない存在となった。その価値について、喜田は次のように述べる。
「やっぱり彼は強くて収まるので、速いですし、足もともあるので、相手にとっては非常に怖い存在だと思います。後ろからすれば、ボールをつけられる。あそこでキープできる・できないでは、(パスを)つける・つけないにも関わってくるので、安心してつけられますし、その後の展開も読みつつ3人目(の動き)だったりを生かす感覚みたいなものも持っているので、自分でもいけますし、いろいろなバリエーションが出てきているのは彼の存在も大きいですし。非常に頼もしい存在だなと思います」
エジガルにとっても、初めてのJリーグの舞台で最高のスタートを切ることができた。何より日産スタジアムは、かつて2002年日韓ワールドカップの決勝で、母国ブラジルが世界の頂点に立った場所。そんな特別なスタジアムでのホーム開幕戦で、ブラジルの英雄ロナウドと同じく2つのゴールを挙げた。
「感動的だったし、幸せな気持ちでいっぱいだった。やはり自分の国がワールドカップ優勝を決めたスタジアムでゴールを決めることができてすごく嬉しく思うし、日本に来るチャンスをくれた神様にも感謝している。今日だけでなく、このスタジアムでは毎試合毎試合ゴールを決めていきたい。でも、まずは自分のことだけを考えずに、チームのために、マリノスのために何ができるかをしっかりと考えてプレーしていきたいと思う」
昨季まで最前線に君臨していたウーゴ・ヴィエイラに比べれると、1試合あたりのシュート数も、これまでに残してきたシュート決定率も、ゴール数も劣るかもしれない。だが、崩しのバリエーションや守備、ボールのないところでの献身性も含めた総合力をチームに上乗せし、攻守の好循環を作り上げることでチャンスの数そのものを増やしてしまえば、エジガルのゴール数も増えていくはず。
アンジェ・ポステコグルー監督が「自分たちのスタイルに合った選手ばかりを連れてきた」と胸を張っていたのは、虚勢ではなく確固たる自信だった。エジガル・ジュニオが開幕からの2試合で見せたパフォーマンスを継続して発揮できれば、マリノスはより高い場所へと到達できるだろう。
(取材・文:舩木渉、データ提供:Wyscout)
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