エジガルは「本番に強い」
J1開幕直前の練習を見ていて、「おや? 大丈夫か…?」と疑念が頭をよぎった。だが、彼はそれをいい意味で裏切り、結果を出している。一瞬でも疑った自分を恥じるべきか…横浜F・マリノスに今季から加入したFWエジガル・ジュニオは、新たなエースストライカーとしての可能性を大きく拓いた。
ガンバ大阪との開幕戦では仲川輝人の絶妙なスルーパスに抜け出し、日本代表GK東口順昭の飛び出しを見極めたループシュートでJ1初ゴールを記録。続く2日のベガルタ仙台戦でもマルコス・ジュニオールが獲得したPKを決めてマリノスに先制点をもたらし、再び仲川のアシストから決勝点となる2点目のゴールも奪った。2試合で3ゴールという数字は、彼のハイパフォーマンスを裏付ける最もわかりやすい指標だ。
マリノスの中盤を支える喜田拓也も「本番に強いと思います。まあでも練習からその片鱗も見せていますし」とエジガルの活躍ぶりに感嘆の声を上げる。背番号30のブラジル人ストライカーは開幕から2試合ですっかり主力の座に収まった印象だ。
エジガルは細かくパスを繋いでボール支配率を高めていくマリノスの一員でありながら、他の選手に比べてボールに関与する回数がかなり少ない。例えば仙台戦でマリノスはチーム全体で691本のパスを蹴ったが、そのうちエジガルのものは17本のみで、成功したのは12本。成功率に直せば71%だった。
最も多くのパスを蹴った畠中槙之輔が108本中102本成功。前線の選手もマルコス・ジュニオールが64本、仲川が45本、途中出場の大津祐樹でさえ約30分間のプレーで30本のパスを出していることも鑑みると、エジガルがプレーに関与する際の傾向も見えてくる。
パス本数も少なければ、パスを受けた回数も少ない。仙台戦では16回、G大阪戦も17回のパスレシーブで、いずれも途中交代ではあったが先発したフィールドプレーヤー10人の中で最も少なかった。それでもシュートを仙台戦は2分の2、G大阪戦は5分の4の高確率で枠に飛ばし、少ないチャンスで確実にゴールを仕留める。「勝負強さ」は本物だ。