若手に求める圧倒的な成長
ただ、もう「昔の中盤、黄金世代」はいない。若手も増えた。今季から10番を背負うことになった安部裕葵は20歳になったばかりで、フロンターレ戦に左センターバックで先発した町田浩樹も21歳、左サイドバックには23歳の安西幸輝が起用されていた。
内田は言う。
「今はみんなまだ若い。裕葵も若いし、町田も、ワンちゃん(犬飼智也)も。レオ(・シルバ)とか(クォン・)スンテとか、ポイント、ポイントでやってくれる選手はいるとはいえ、ポテンシャルはあるけどまだ若いし、昔の人たちの方がサッカーを知っていた。その中で俺みたいなやつが声を出して粘れるところまでいけば、ポテンシャルはあるから。そこからはあいつらの技量に任せる感じだね」
フロンターレ戦での内田は、アシストの場面以外で決して目立たなかったかもしれない。だが、選手のパフォーマンスを点数化している『Sofascore』のレーティングでは10点満点中「7.6」を記録し、これは鹿島の選手の中で最も高く、試合全体を見ても相手の中村憲剛に次ぐ数字だ。
地味でも際立ったパフォーマンスを見せれば正当に評価される。確かに要所には必ず黒いサポーターを右ひざに巻いた内田の姿があった。フロンターレに押し込まれてゴール前での守備を強いられれば、最後の最後まで粘って足を出す。攻撃に移れば、スッと前に出て相手の選手の背後を突いたり、前がかりになる見方の後ろに入ってサポートしたり自在に動き回った。どんな時でも身振り手振りを交えながら周りの選手に指示を出して、盤面を動かす。
サイドバックは単にタッチライン際を上下動するだけではなく、ゲームメイクもできる。その現代的なプレースタイルの基準を内田は身をもって示している。「今日はサボりたいから、しゃべって周りを動かしていただけだよ」とうそぶくが、90分間で10.115キロという走行距離も「サボり」が一切なかったことを証明していた。