「逆に僕はこの状況を割と楽しめていて」
キックオフ直後からハノーファーには覇気がなかった。守備に強度はなく、連動したプレスでボールを奪いに行くこともできない。大敗に次ぐ大敗では無理もないが、ハノーファーの選手たちは、根本的に「自信」を欠いているようだ。
原口は言う。
「どうしてもこういう状況でプレッシャーがかかる試合で、みんながやっぱりボールを受けるのを少し怖がっているような感じはする」
よってボールを奪った後の攻撃も曖昧なものとなり、なかなかシュートまで持っていくことができない。対照的にシュトゥットガルトは、この試合の重要性を誰もが理解し、緊迫感を力に変えているようだった。残留のために、勝利をもぎ取るために雪崩れ込んでくる。ハノーファーは16分、45分と、CKからオツァン・カバクにあっさりとヘディングで得点を許すと、なす術なく前半を0-3で折り返した。
後半に入ると、[3-5-2]の右ウイングバックから[4-3-3]の右ウイングにポジションを上げた原口。68分に右からクロスを入れると、ヨナタスがヘディングでゴールを決める。
しかし、それからハノーファーの怒涛の反撃が始まることはなかった。78分、81分とスティーブン・ツバーに2ゴールを叩き込まれ、終わってみれば1-5の大敗。順位も17位のまま。16位シュトゥットガルトとの勝ち点差は、5に開いた。残り10試合。1部残留は、さらに難しくなった。
だが、原口は「逆に僕はこの状況を割と楽しめていて」と言う。なぜなら「リスクを冒せる」からだ。
「自分自身が前のポジションになって、後半はリスクを冒せるようなプレーができた。そこに対してはやりがいを感じたし、怖がらずにやりたいなと、こういう状況だからこそ」
ブンデスリーガの舞台に生き残るためには、目の前の試合で守りに入ってはいられない。もちろん守備を軽視するわけにはいかないが、ボールを奪えば勝利を目指して攻めるしかない。もうリスクを冒すしかないヒリヒリするような状況は、アタッカーの原口にとってはかえって好環境なのかもしれない。