九死に一生を得たユベントス
こういう状況でも個のクオリティとフィジカルパワーで強引に流れを戻すのが、ユベントスというチームだ。だがナポリの選手は各々が技術に自信を持っており、チェックをかわしてパスをつないでくる。61分、インシーニェの左クロスをホセ・マリア・カジェホンがサイドから絞って合わせるという得意のパターンで1点を返した。
するとそこから先は、完全に相手のペースだ。ユーベは押し捲られ、振り回され、守備がずらされた挙句、雑なクリアで逃げるほかはなくなっていた。そして83分には、とうとうハンドでPKも献上。これをインシーニェがポストに当ててしまい、ユーベは九死に一生を得た。
内容ではひどかろうが勝ったのはユーベ。アウェイ26試合連続で無敗という記録も打ち立てた。「大変な試合だったが、勝ち点3は僕らとトリノへ行くことになった」とエムレ・ジャンが自身のインスタグラムで語ったことが彼らのプライドをよく表現している。
もっとも、いくら結果が重要だといっても、それで万事良しとなるわけではあるまい。この内容は、チャンピオンズリーグ(CL)・アトレティコ・マドリー戦に備える上で選手に安心と自信を与えるものになるのだろうか。コンパクトネスの失われた守備、中盤のプレスをいなせないパスミスの多さ、攻撃面での連動性の欠如と、あの第1レグで晒した欠点はそのままになっていた。
「アトレティコ戦ではパスミスをしないことが重要なのだが、その意味でも今日の試合は不満の残る出来だった。あの試合は我われに、メンタル上の砕屑物を少なからず残していった」。マッシミリアーノ・アッレグリ監督は不安を口にした。どう切り替えて、次につないでいくのだろうか。
(文:神尾光臣【イタリア】)
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