風間理論はジョーにとって発見だった
ジョーは風間監督の理論を受け入れている。力で敵をねじ伏せるのではなく、相手の動きをずらしてパスを受けるようになった。それはむしろ小さなFWの動きであり、タイミングはもちろんだが、単純にフットワークのよさも求められる。重さより軽さ。だから余分な重量を削ぎ落とした。
DFのマークを外すようになったジョーは無敵だった。もともと繊細な感覚を持っていたが、風間理論は無差別級のゴールゲッターにとって新たな発見があったようだ。ブラジルで成功していた自分のスタイルの修正に積極的に取り組んだ。結果はまさに鬼に金棒。ジョーが正面から力づくで戦ってくれるうちは、DFもまだ対処のしようはあった。ヨーイドンなら速さで勝負できる。
しかし、マークを瞬間的に外される、あるいは背中へ回られてしまうと、元来あった階級差が倍増してしまうのだ。届かない場所へボールを置かれてしまう、そうなったら体をぶつけて妨害しようにも「階級」が違うのでどうにもならない。名古屋とジョー、水と油にも思えたものが融合していた。
大きなストライカーを生かすことに成功した風間監督の次のターゲットは、どうもガブリエル・シャビエルらしい。
(取材・文:西部謙司)
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